【番外編②】とある満月の夜

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日は すっかり落ち、辺りは暗い静寂の世界に包まれた。 「はぁ~、終わったぁ~。」 リアナは独り、自室で読書をしていた。 「何にもない時は、やっぱり読書に限るわ~。」 リアナは伸びをし、欠伸(アクビ)をする。 懐中時計を見ると、針は夜の10時近くを示していた。 「まだ10時か…。寝る時間まで まだあるし、もう一冊 借りてこようかな。」 リアナは腰掛けていたベッドから立ち上がり、部屋から出ていった。 廊下の灯りは消えており、不気味さを漂わせていた。 「うわ~、幽霊 出そう…。」 リアナは蝋燭を片手に、暗い廊下を歩き、書斎へと向かった。 「えーと、確か この本は…。」 リアナは借りていた本を元の場所に戻すと、次に借りる本を探す。 「“エスペルツの歴史”…、“アーサー王伝説”…か…。んー、どうしようかなー。」 蝋燭の灯りを隣の本棚に移した時だった。 「何をしてる。」 突然ルバンツェの姿が現れた。 「うおっ、わ、わわ!! ル、ルバン!!」 「リアナか。こんな夜遅くに、何をしてるんだ?」 「借りてた本の返却ついでに、新しい本を借りようと思って。ルバンは?」 「俺は寝付きが悪いから、散歩で来ただけだ。」 ― 室内で散歩かい…。 「吸血鬼なら、この時間は起きてるんじゃないの?」 「いつもならな。明日は仕事で、北方の街に行くから早めに寝たんだがな。」 「羊の数でも数えれば?」 「そんな子供染みた事で眠れるか。それに…。」 「それに?」 「…お前、忘れてないか?」 「忘れてって、何を?」 「やっぱり忘れてる…。今日は何の日か、知ってるか?」 「何の日って…。ま、まさか…。」 リアナは窓の外に目を向ける。 黒い空にポッカリと穴が空いた様に浮かぶ月。 それは、三日月でも半月でもない。 まごうことなき、満月。 「…あ、あれれぇー…?」 「俺が言いたい事、分かるよな?」 ルバンツェが妖しい笑みを浮かべた。
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