運命は突然に

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「何をしている?」 そこへベージュのマントで身を包んだ青年がやってきた。 顔もターバンで覆われており、素顔が見えない。 「いやぁ、この奴隷が歯向かってきたもので、ちょっとした躾をしていましてねぇ。」 「俺には一方的に暴力を振るってるようにしか見えなかったが? 度が過ぎるんじゃないか?」 「いや、こうでもしないと言う事を聞かないものでしてね。ありゃ? 気絶してる。」 男が鼻で笑った途端、青年が突然男の胸倉を掴んだ。 「ひっ…!?」 「お前は人を人として見ていない、最低のクズだな。」 「で、でもコイツらは…!!」 「奴隷と呼ばれていい人などいない!」 青年は男を突き放すと、懐から麻袋を取り出し、差し出した。 「へ…?」 「此処にいる者達を全員、俺が買う。文句ないな。」 「は…、はぁ…。」 男は目を丸くし、キョトンとした。 街から外れた草原。 売られていた奴隷達は鎖を外され、青年にトボトボと着いていく。 青年の背には気絶したリアナが負ぶられている。 相当酷く痛みを与えられたのか、目覚める気配がない。 「何故助けなかった?」 問い質しても奴隷達は答ず、口を開こうともしない。 「…誰かを助けなければ、自分が救われない事だってある。少しはそういう勇気を持て。人間ならばな。」 街から大分離れた草原の道に、東と西に向けられた方角板が刺さっていた。 「此処まで来れば大丈夫だな。」 青年は奴隷達の方を振り向いた。 奴隷達は何をされるのかと思ってか、肩を竦めた。 「お前達は此処で自由の身にする。自分の好きな道を行け。」 「え…、でも…。」 青年は懐から麻袋を出し、中に入っていたお金を何枚かに分け、彼等に渡す。 「少しでも足しになるといいが…。俺は弱い者を手下にする気はない。あの男に気付かれないうちに、早く行け。気を付けてな。」 そう言うと、その場にいた少年少女達は頷き、各々の道へと走っていった。 「さて…、コイツは手当てが必要だから、連れて帰るか…。いや、コイツは…。」 青年はリアナを背負い直し、先程の街へと戻った。
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