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「この間のことですが、何の真似ですか?」
「新堂先生…」
「残していったメモ。あの番号は、花畑先生の携帯番号ですよね?どうして…」
「あの、新堂先生…。私、先生のこと…ー」
「花畑先生、それじゃ薫宮さんの事は言えませんよ。ここは学校の保健室です。そして、貴女はここの教師でしょう…?」
「しん…どう……先生、」
「花畑先生、教師の自覚を持っては?」
先生の厳しい瞳に、花畑はグッと堪えて声を静めた。
「………どうしてあの娘が入り浸って居るのに、何も言わないんですか?」
「彼女はクラスに馴染んでません。登校拒否をされるより、いいとは思いませんか?」
堂々と言い放つ先生に、たじろぐ花畑。
「そ…れは、」
「彼女は以前、男子生徒に襲われたことがありましたよね。そのクラスの担任は花畑先生、貴女でしたよね?」
「…………」
「先生は少しでも、彼女がクラスに戻れるように努力したんですか?」
俯く花畑に、クスッと先生が笑う。
「それで俺が好き?…………はっ」
ガタンッ
先生が蹴り上げて、倒れたイス。
それによって側の観葉植物も、音を立てて崩れ落ちた。
「……笑わせんじゃねーよ。」
「せ………んせ…」
冷たい先生の低い声に、花畑が息を呑む。
「お帰りください。僕に構う暇が有るのなら、授業に戻れば?」
先生が向ける、造りものの笑顔。
「……男子生徒がコンナコト聞いたら、泣くんじゃないですかね?マドンナせんせ。わるいケド、俺、若くて可愛い子のが好きなんだよね。……帰って。」
「…お邪魔しました、新堂先生……」
未練を残したまま、逃げるように保健室を後にする花畑。
「……して…?」
拳を握りしめて、ある思いを胸に抱きながら。
「絶対に負けない……。」
花畑先生のこの日の決意を、あたしは知らなかった。
勿論、先生があたしをかばってくれていたことも……。
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