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そして何より、暑さ。 今僕は木陰に設置されたベンチに、上体を後ろに傾け、天を仰ぐように座っているわけだが、「なんだこの暑さは!」と叫びたくなるくらい暑い。もう「熱い」と言ってもいいくらいねっとりと絡み付く暑さは、この夏休みの間常にクーラーの効いた快適極まりない部屋でアイスなんかをむさぼり食ってた僕には致死的だ。死活問題だ。生命の危機だ。鬱でもないのに死にたくなる。 「……」 ふと、思い付く。 この公園は標高800メートル位の低い山の麓よりやや上辺りにあるのだが、その山の中腹には僕の母校がある。 去年まで通っていた中学校だ。 耳を澄ませば、野球部かソフトボール部かのボールをバッドで打つ音が聴こえる。 中学の職員室なら、クーラーが効いているんじゃないか? 「……」 人間万事塞翁が馬。 辛い思いは十分した。 なら次は、良いことがあったっていいはずだ。 さっきまで散々嫌いだと言っていた諺を思い浮かべながら上体を起こす。と、 「……」 「……」 少女と目があった。 いや、それ自体は別にいい。 ここは公園で、今は昼時を少し過ぎたくらい。 前を向いたら遊んでいた子供と目が会うくらい、そんなに低い確率じゃあない。多分。
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