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=エピローグ=
辺りには土砂が降り注いでいた。威妖は鋼鉄の体を元に戻すと、深く息を吸った。傍らではもうすでにナムンと小さくなった二体の蛇が威妖を見つめていた。
『げほっげほっ!先生・・・当たり前ですがご無事でしたか。』
『・・・それはまるで私に何かあったら良いような言葉に聞こえますが。』
威妖の苦い表情に無表情で答えるナムン。陽蛇はそうだそうだと頷き、陰蛇は無言で威妖に同情の表情を投げかけている。
『いやあ、そんな事ないっすよ!全く相変わらずひねくれてますね・・・』
『なに?』
『いえ!ご無事で何より!!』
威妖はそう言って笑うとバン!と地面を蹴って立ち上がった。
その眼前にはひどくえぐられた土の壁と岩盤と、そして足元にはシエンカ・タンのものだったのであろう白い体毛が僅か残っていた。
そう、敵は跡形もなく爆発四散したのであった。
『威妖くん・・・君の胎息は不完全ね。それでは武息の方がよっぽどましだわ。』
武息とは、旧世界より伝えられし「仙氣道(センキドウ)」の基礎呼吸法である。
威妖は頭を掻きながら無邪気に笑った。
『でも・・・まぁ、咄嗟に「鋼鉄人形」の術を使って敵の攻撃に耐えたのは正しい判断だと思うわ。懲罰は免除しましょう。』
『は!はは~っ!!』
ナムンはそう言って初めて笑った。威妖は師匠のそんな笑顔に少し、心がときめいたのを感じた。そして次の瞬間には、ナムンは普段の少女体に戻っていた。
『・・・ふう、やったね威妖くん。』
『は、ははは・・・。そうですね。それじゃ、ポーたちの所に戻りますか!』
威妖はそう言うと、もはや何の力も持たないナムンを背中に背負いゆっくりと崖を登っていった。陰蛇と陽蛇も器用に体をくねらせて岩を掴み、滑るように崖を登っていった。
いつの間に現れていたのか、夕日が一同の背中に穏やかな東日(*1)を照らし出していた。
そして数週間後。
ぷるぴく虫の集団はシエンカ・タンに乗っ取られていたコロニーに戻っていた。
さらにそこには数十人のトロイア王国からのピクシィもいて、そのコロニーの修復を手伝っていた。
そしてその中には大臣ポーも「ちび虫」を腕に止まらせながら、復興の現場指示を行なっていた。
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