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「ちょ、やめてって、どうしたの伊織」
「副賞は商品券だよ、だから、そろそろ千尋の首を放してあげな」
二人に向け、落ち着いた、しかしどこかからかう様な口調の声がかけられる。
伊織と千尋が声の主の方を見ると、そこには二人の入学試験以来の友人、春風薫(はるかぜ かおる)がいた。
髪は顎の辺りで切り揃えたショートボブで、薄い緑色をしている。整った顔立ちは初めての人が見たら、冷たい印象を与えるが、温和な性格で、伊織と千尋はすぐに打ち解けた。
「私を見るのはいいから、いい加減首から手を放してあげたらどうだい」
「悪い、千尋」
伊織は適当に謝りつつ、手を放した。
「悪いじゃない!いきなりクビを掴んでガクンガクンするんだから、私がもし優しい女の子じゃなかったら、アンタを魔法でぶっ飛ばして、大会後まで起きないよにしているわよ」
「普通自分で優しいとか言うか?たかだかアレくらいで怒ってると身がもたないぞ」
「アンタのせいでしょ、大体いつもあんたは…」
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