0人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は説明を始めた。
人間盲目人参症。
それはある日突然、動くものすべてが人参に見えるようになると言う病気。
その特徴は、人間盲目人参症にかかった人間同士は普通の人間に見える。
また、一部が人参になって見えたものは、その病にかかりかけているのだと言う。
本人に自覚症状はなく、かかって初めて気付く。
命に別状はまったくない。
「でもどうして僕が突然?」
昨日までなんともなかったのだ。それがどうして…
彼女はきっぱり言い切った。
「あなた、人参が大嫌いでしょう」
……………たしかに、好きではない。正直、この世から消えてもらいたいくらいの食べ物だが…。
「この病気は人参が嫌いな人がかかるの。全員ではないけれど」
「ち…治療法は??」
「あるわ」
彼女は言った。
「人参を好きになればいい」
ついに僕は絶句した。
何年も嫌いと思い続けた野菜を今更どうして好きになれよう?
否、無理だ…
「だぁいじょうぶよ、慣れたら形の違いとかで判別つけれるようになるって」
軽く笑って話す彼女の言葉を、僕は呆然と聞き流していた…
~完~
最初のコメントを投稿しよう!