6878人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「美味しい?」
キャティが作ったのは、所々生クリームでトッピングされたチョコレートケーキでした。
それはもう犬のようにガツガツとケーキを貪る禁児が、キャティの質問に笑顔で答えます。
「ああ、旨いぜ! キャティも食えばいいじゃんか」
口の周りをチョコで汚しまくる禁児の言葉に、キャティは首を振ります。
「ウチはええわ。猫にとって、チョコは毒やからなぁ。禁児が美味しいんならなによりや。味見出来んから、毎回心配なんよ~」
安心したように笑うキャティに、禁児が不思議そうな表情を浮かべて問い掛けます。
「そうなのか? じゃあお前も食べれるの作れば良かったじゃねえか」
その言葉に、キャティが照れたように笑いました。
「バレンタインでこれを作った時、禁児美味しい言うてくれたやん? それが嬉しくてなぁ。つい今日も作ってもうたんや」
ニコニコと微笑むキャティに、禁児が大袈裟に涙を浮かべます。
「そうなのか……。俺のためにこんなにも……嬉しいぜキャティ!」
そんなわざとらしい台詞を吐きながら、禁児がテーブルに乗り出してキャティの手を両手でガシッと掴みます。
「ふにゃあっ!? な、なんやいきなり……」
禁児の突然の行動に、キャティが顔を真っ赤にして慌てます。
そんなキャティに、相変わらずわざとらしい涙を浮かべたまま、禁児が言葉を続けました。
「いや、あんまりにも嬉しくてな……。そうだ! お返しにもならないかも知れないが……」
禁児はそう言って、ゆっくり立ち上がると、おもむろに冷蔵庫を開け、中から一個のパンを取り出したのでした。
最初のコメントを投稿しよう!