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「ほら、喉乾いただろ? またすぐに注いでやるから、まずお茶を! お茶を飲むといいんだぜ!」
「せやな。ありがと」
やたらとお茶をアピールする禁児にも疑いを持つ事無く、キャティがコップに口をつけます。
(そう! もう少し、もう少し!)
「……でも、禁児」
「ホァァァァ!」
しかし次の瞬間、コップから口を離して言葉を紡ぐキャティに、ワクワクして覗き込んでいた禁児がずっこけます。
「ど、どないしたん?」
「い、いや、何でも無いんだぜ! それより、何か?」
慌てて取り繕う禁児に、キャティが一瞬訝しげな表情を浮かべますが、直ぐさまいつもの顔に戻ります。
「これ、ほんまにウチが食べてええん? ウチ、禁児のその気持ちだけで……」
「いいんだキャティ! いいから遠慮無く、可及的速やかにその茶を飲め! 飲み干せ! 流し込めぇっ!」
とりあえずアンタ、落ち着け。
「い、いや。お茶はええんやけど、このフィッシュ……」
「シャラァップ! 食え! 遠慮はいらない、さあ食え! 俺はお前のケーキ以外で腹を膨らませたく無いんだぜ!」
「そ、そこまでウチのケーキを? 禁児……ありがとな」
禁児の偽りの言葉に、胸を抑えてジーンと感激するキャティ。
「そう! だからまず茶を飲め。その方が美味しくフィッシュバーガーを食えるんだぜ!」
何の根拠も無い禁児の言葉ですが、キャティはそれに対して笑顔で頷きました。
「せやな、ほな頂くで」
キャティが笑いながら、コップに口を付けました。
(よしよし、いよいよだ……)
「あっ、禁児」
「ブフゥゥーッ!」
またしても寸止めのキャティに、禁児が再度悲鳴をあげました。
「ど、どないしたん?」
「ああ、いや、ははは。今度はなんだいキャティちゃァン」
声を裏返して質問を返す禁児に、キャティが笑いながら答えます。
「せっかくやからさ。乾杯って奴せえへん? ケーキあるんやし、ちょうどええやん」
「ああ! 分かった分かった! その代わり、乾杯したらそのまま一気に飲み干すのがマナーだからな!」
「あ、ああ。了解や。ほな、乾杯ー♪」
「乾杯!」
グラスの触れ合う音が響き、二人は各々のコップに口をつけます。
こうして、キャティは今度こそ媚薬入りのお茶を飲み干してしまったのです。
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