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禁児の胸をかき鳴らす鼓動、そして頭をもたげたのは罪悪感。
このまま放っておけば、キャティは今夜、守ってきた全てを禁児に捧げるでしょう。
そして、明日にはそれを忘れてしまうのです。
いずれ本当に心を決めた相手のために、大事に守り通してきたものを、知らぬ間に失ってしまうのです。
それを思うと、さしもの禁児も胸が痛むのでした。
(……いいのか? こんな薬で、キャティの身体を傷付けて、本当にそれでいいのか?)
禁児が葛藤します。
熱く火照っているのに、汗で冷たく感じる肌を抱き締めながら、キャティの気持ちを想います。
そして次の瞬間、禁児は決意しました。
(OK! 問題無し! ゴートゥへヴン!)
……やっぱ駄目でしたコイツ。
こいつの頭の中で天使と悪魔が戦う事はたまにありますが、天使が勝った試しはありません。
今回もその例に漏れず、悪魔の圧勝だったようです。
「キャティ……やらないか?」
禁児の鼻息がウホッと音を立てます。
キャティの頬に差した紅が色を増しました、
「……ええよ」
キャティが小さく頷きます。
媚薬が効いていても、やはり怖いのでしょう。
呟いたキャティの身体は小さく震えていました。
「じゃあ、俺のイカフレーバーの松茸、受け取ってくれ」
真剣な顔で、壊れた台詞を吐く禁児。
とりあえず、死にましょう。
「禁児、優しくせんでもええよ……。ウチは痛くても構へんから。その代わり大事なウチの初めて、しっかり感じてな……」
それだけ言って、口をつぐんで目を閉じるキャティ。
そして、禁児が社会のウィンドウにゆっくりと手を掛けます。
――その時。
バタン!
「ただいま! 禁児さん、一緒にイース党のソーセージパンを……食べ……」
勢い良く扉が開く音、入ってきたキィナの声。
「キ、キィナ……」
「あ、あれ……? こ、これは……」
固まる二人に混乱するキィナ。
そして部屋に流れる沈黙。
「あ……キ、キィナ……。ソ、ソーセージなら俺も今から出すから大丈夫だぞ」
それはもしやフォローのつもりですか?
本当に死んで下さい。
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