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「ふん! 何も知らずに愚かな……」
緊張感炸裂しまくりの空気を破るかのように響く声。
その主は、天狗でした。
てか、まさかこの変態天狗、禁児とキャティの一部始終をずっと眺めていたんでしょうか。
「て、天狗? 頼むから余計な事は……」
「禁児さんは黙ってて下さい!」
キィナの声に思いっ切り身を震わせる禁児。
そして天狗は、悠々と話を続けます。
「勇者はな、悪魔から媚薬を奪い取り、その野望を挫いたのだ。そして、その効き目を確かめるため、けだもの相手に実験を行ったと……そう言う事だ」
「いやああああああ! 馬鹿天狗ーっ!」
思いっ切りカミングアウトをしてくれちゃった天狗に、禁児が悲鳴をあげます。
キィナの禁児を見つめる瞳は、それはもう氷のように冷たいものへと変わっていました。
「なるほど、つまりロクナから媚薬を盗んで、キャティさんに飲ませて手ごめにしてやろうと、そういう魂胆だったんですか。最っ低ですね」
「い、いや、ちちちち違うんだ! 落ち着いて話を……」
既に汚物を見る目へと変わったキィナに、禁児はなおも言い訳を続けますが、キィナは華麗にスルーしてポケットから携帯を取り出し、ダイヤルをし始めました。
「090-697…」
「ちょっ……! その番号は……! キィナ、おちつ……ぶふぅ!」
どこかへ電話をかけようとするキィナに飛び掛かろうとする禁児でしたが、しっかり障壁で防がれてしまいます。
「あ、もしもしロクナ? 禁児さんがですね……」
「いやああああああ! やめて! お願い! なんでもするから!」
わめき立てる禁児にはシカトを決め込み、キィナはロクナとひとしきり会話を終え、電話を切りました。
「……禁児さん」
「は、はい……」
ビクビク震えながら沙汰を待つ禁児。
それに対して、キィナは満面の笑みで言いました。
「すぐに行くから、遺書を書いて待ってるように、だそうです」
「いやああああああっ!」
大方の予想通り、死刑宣告でした。
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