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「この先ですね……」
どでかいリュックを背負い、ピッケルやら防災頭巾やら消化器やら浮き輪やら様々な物を装備した、どこに何しに行くのか誰にも分からない三人の少女が、地図を手に大通りを行きます。
「あれ? どうしたんだい三人とも。どっかに大冒険でもするのかな?」
ふと、声をかけられ三人は振り向きます。
そこには気さくに手を振る剣の姿がありました。
「あっ……。剣さんなら……」
「……せやな」
キャティとキィナが揃って頷き合います。
剣なら、上手く説明できるかも知れないと感じたようですね。
「剣さん、実は――」
キィナが、剣に今までの経緯を、バナナなどを省略しながら説明しました。
「なるほど。赤ちゃんの作り方か。ホテルに行けば、じっくり説明が……ごめんなさいごめんなさい。俺が悪かったです、悪かったからその鋭利な爪をしまってください」
ギロリと睨みを利かせて剣の喉元に爪を突き立てるキャティに、剣が懇願します。
「ええから、はよ説明せえや」
キャティの言葉に、剣がエヘンと咳払いをして言葉紡ぎました。
「赤ちゃんは女性の中の海で生まれるんだ。でも、そのためには男性がその海へ命の素を送らなければならないんだよ」
なんか雲行き怪しいです。
「男は皆、船を持っている。その船が命の素を海まで運ぶんだ。でも海へたどり着くには、船が河口を抜ける必要がある。しかしその河口は、普段水が枯れてしまっているんだ。そこをどう潤す事ができるか。それが男の手腕だと言ってもいい」
なんか話が変わってる気がします。
「薄い桃色の椿の花にも似たその河口は、とても柔らかくて芳しい。時に見つめるだけで、そこにうっすらと水を滴らせ、船を誘う。河口の上方には、ぷっくりとした、豆……岩と喩えようか、岩がついている。最初はそこを優しく船首で刺激してあげればいい。また、河口の遥か上方にそびえる二つの山。そこをねっとりとした舌を使って……あれ?」
一人得意気に語る剣の周りには、可哀想な視線を向ける人だかり。
そこには、既にキャティ達の姿はありませんでした。
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