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「……船ってなんですか? 頭のてっぺんに一本髪の毛がある人の奥さんですか?」
「ノインは気にせんでええんや!」
先程の剣の言葉を反芻するノインを制しつつ、三人は通学時に通る銀杏並木をいつもとは逆に曲がります。
その後、紅葉町一番のアーケード式商店街、『もみじがり商店街』を抜け、すぐ右手に見える西欧風のレンガ作りがお洒落なアパートの前に立ちました。
「ハイツ・ブラックドラゴン……ここですね」
なんですかその偉そう名前は。
「せやな、じゃあ行くで……」
キャティがGokuriと生唾を飲み込み、階段を上がります。
アフロ先生の部屋は302号室。
キャティとキィナは緊張の面持ちで、ノインはどこかしらワクワクしたような足取りで、階段を上がります。
そして、一行が三階に上がったその時……。
「ひぃやああああ!」
なにやら軽薄そうな茶髪のスーツ野郎が、302号室から飛び出してくるのが見えました。
「クラゲ……クラゲ……いや、そうじゃない……あれは鳥……? ヒィィ! やめてくれ! 寄るな、触るな、這いまわるなあっ!」
茶髪君は、綺麗にセットされていたであろうヘアをバリバリかきむしって、真っ青な表情でガタガタ震えていました。
「……なんだ貴様。今、うちのチャッピーを馬鹿にしたか?」
部屋の中から聞こえてくる、ドスの利いた声はアフロ先生のもの。
茶髪はビクンと身体を弾ませて、ヨタヨタした足取りで階段を駆け降りていきました。
「……ったく、女の部屋に入るなら、それなりの覚悟をして欲しいものだな。そう思わないか、チャッピー?」
「ギョエッギョエッギョエッ! アイツ、イクジナシ! ギョエッギョエッ!」
姿は見えませんが、部屋の中から聞こえてくる確かな声。
やがて、302号室の扉が閉まると、キィナが無言で携帯電話を取り出しました。
「……もしもし、アフロ先生ですか? お話したい事があるので、一時間後くらいに、喫茶店『ファム』まで来てもらえませんか?」
秘境探検、断念です。
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