次の日(チィコ後編)

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次の日(チィコ後編)

その日は朝からAちゃんの様子が変だった、ずっとうわの空でときどきチィコのほうを見てはなにか呟いていた。 給食の時間みんなが席に着くとAちゃんがスッと立ち上がると教室を歩いていく。僕はそれを横目で見送るとご飯を食べていたが、突然 「ドーーン」 という音が響いた。驚いて振り返ると、床にクラスメイトのSが倒れていてその上にAちゃんが馬乗りになっている。一瞬何が起きたのかわからなかった、Aちゃんは左手でSの口に何かを押し込むように、 「ほら食べなさいよ、ゆるさないから、早く食べてみてよ!」 と叫んでいる。 そして、左手の何かがSの口に押し込まれる。 「ゲェッ」 苦しそうに涙を浮かべSが吐いた。しかしAちゃんはやめない。 「チィコはねもっと苦しかったのよ。チィコに謝って。」 と、さらにSの口に押し込んでいく。 そこへ誰かが呼びに行ったのであろう先生がやってきて「何やってるの!」と叫んだ。その声にハッとなり僕はあわててAちゃんを止めに入る。 その時初めてAちゃんの手にしていたものがわかった ケシゴムだった。 Aちゃんを必死でおさえる僕の後ろでSが泣きながら「ごめんなさい」と繰り返し呟いているのが聞こえた。 するとAちゃんが 「もっとちゃんと謝りなさいよ。」と静かに言った。その声の冷たさが怖かった Sは泣きながらカゴの前まで這っていき、カゴに向かって「ごめんなさい、ごめんなさい…。」と大声で謝る。 それを見たAちゃんは、 「チィコがゆるしてくれるって、よかったねS君。」 とSに向かってくすっと笑った。   結局SとAちゃんは早退。そして午後の授業で先生に 実はチィコが病院にいった原因がケシゴムを食べたことだったこと、そしてどうやらそれを食べさせたのがSらしい。 と聞かされた。ただチィコがケシゴムを食べたことは誰にも話してなかったし、ましてSが犯人だったなんて誰も知らなかった。 ただ僕だけは確信していた(Aちゃんはチィコに聞いたんだ…) 次の日、いつもより早く登校すると教室にAちゃんがいた。Aちゃんは楽しそうにチィコと話している。 聞きたいことが色々とあったけど、とりあえず 「おはよう」 といった。Aちゃんも僕を見て「おはよう」と言った。そしてくすっと笑った。 その笑顔をみたらどうでもよくなった。 チィコがぴぃっと鳴いた。 「はいはい、おはようチィコ、ピヨ太」とりあえず僕も笑うことにした。
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