Aちゃんの家(アルバム)

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Aちゃんの家(アルバム)

階段を上がって真正面、廊下のつきあたりのAちゃんの部屋にはいった。 部屋のなかにはぬいぐるみがいっぱいで、だけどきちんと整理されていてAちゃんらしい部屋だなと感じた。 「座って座って。」 ちょこんと置かれたテーブルのそばに、ちょこんと座ったAちゃんが僕を手招きして呼んだ。 「うん。」僕は、Aちゃんの向かいに座る。 「ちがうの、こっちに座るの!」 そういってAちゃんは左の床をぽんぽんと叩いた。 「え?う、うん。」 隣へ移動する。いつもと同じ位置、でも今日は一つの机に座っている。当然Aちゃんとの距離も近かった。 僕は落ち着かなくて辺りを見回す、視界の端っこベットの横に本棚を見つけた。 「なんか本読んでもいい?」 「いいよ。」 僕は立ち上がって本棚に近づく、背表紙をひとつずつ眺めていく。ふとひとつの本が目にとまった。 何も書いてない真っ白の背表紙。 ひっぱりだして表紙を見るとそれはアルバムだった。 1ページ目は赤ちゃんの写真、その下に小さく書いてあった。 6月15日 A 誕生。 次のページをめくる。 初めての誕生日。ケーキを前に笑ってるAちゃんが写っている。 ページをめくっていく。二歳、三歳。入園式。少しずつ大きくなっていくAちゃん、だけどなにか違和感を感じた。ページをめくる。 写真の中のAちゃんがこっちを見つめている。 わかった。目の色が違う。写真の中のAちゃんは、二つの大きな黒い瞳でカメラを見つめポーズをとっている。 次のページをひらく。 「これは見ちゃだめっ。」 Aちゃんの手が目の前に飛び込んできた。 そしてそのまま本を閉じると本棚に戻してしまった。「なんでだめなの?」 「はずかしーからだめなの!」 仕方なくそのあとは横にあった動物図鑑を二人でみながら過ごしたが、僕は見ていた。Aちゃんが閉じる直前、開いたページにあった写真。 こっちを見つめるAちゃんの写真。そして下に、 A 五歳 変わりはじめ 動物図鑑を眺めながら僕は思っていた。 あれはたぶんAちゃんのアルバムじゃない。Aちゃんの瞳のアルバムなんだ。 横に座って楽しそうに図鑑をのぞきこんでいるAちゃんを見た。心なしか初めてあったときよりも、左目の赤色が強くなっている気がした。
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