序章

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 砂混りの渇いた風が通り抜ける。口に入ると錆びた鉄のような味がした。  砂が舞い上がり視界を悪くしている。時折、舞い上がった砂の切れ目から見えるのは地面に転がる何か。地面にいくつも見えるのがわかる。  私はそれに誘われるかのように近付いていた。そして、少し進むとそれが何なのかわかった。  (クリスタルへの昇華が始まっている……)  やはり人であった。それは生きていたときの生気を失い、ただ物として地面に転がっている。  私を含め全て、このメルファリアの大地に生きる者は一部を覗いて、命尽きてもこの大地の生命の根源たるクリスタルへと還り、またクリスタルから元生きていた直前の形で再生する。これをこの地では昇華と呼んでいる。  この死体を含め、周囲の死体は全て、その昇華が始まっており、独特の光を放ち続けていた。  そんな神秘的な光の流れをしばらくの間眺めていたが、私はふと我にかえる。  (私は何故ここにいる?)  (私は何をしていたのだろう?)  何故か虚ろな私の頭は、まったく働かなかった。
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