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「とりあえず今日はこれ着て下さい♪」
「………。」
とあるマンションの一階にある部屋。
そこで向き合う…ピンクの髪の女の子と、金髪の美男子、ライ。
組織を裏切った彼は、たまたまそこに居合わせた少女、ルルカによって彼女の家に今しがた運ばれたところであった。
話をしているうちに暗殺の仕事を辞めて学校に行くことになり…
そして学校に通うまでは家に泊めてくれるということになり…
この数分のうちで、自分の人生が一気に真逆のものへ変えられた気がする。
…そしてニコニコと微笑みながら、あの猫を代表する人気キャラ、ハロ○キティがプリントされたパジャマを差し出す少女。
「…あのさ、悪いんだけど…パジャマってこれしかない?」
「他にもいっぱいありますよ?でも私…いくら猫さんでもキ○ィちゃんはあんまり好きじゃないんです。だからコレ、一回しか着たことなくて…もったいないから着て下さい♪」
「………。」
そう笑顔で言われては断るにも断れない。
居候の身である以上、ワガママを言うわけにもいかず…
「……わかった」
暗殺の仕事を受ける時と同様、心を無にして機械的にそう述べた。
「あ、気に入ってもらえましたか?だったらよかったです♪タオルは洗面所に置いてあるんでそれ使って下さい♪お風呂はあっちです」
べつにパジャマが気に入ったわけではないが、とりあえず頷いて風呂場へ向かう。
洗面所に入り、扉を閉めたところでようやくそこで一息ついた。
「(…オレ、なにやってんだろ)」
そんな疑問が頭をよぎる。
血と雨に濡れた黒い服を周囲を汚さないように気をつけながら小さく畳み、床の端に置く。
服を脱ぎ、浴室に入ってシャワーを浴びながらも、ずっと延々とそんなことを考え続けていた。
自分が選んだ道は誤ってはいないのか…
自分は変わることが出来るのか…
シャワーの水音が浴室に響く中、シャンプーを使おうと、猫の形をした容器の取っ手を、軽く下へ押しだした。
にゃー
「……っ!?」
突然シャワーではない、違う音が響き渡り、ライの思考は一気に警戒モードへと切り替わる。
しかしそれきり止まってしまう先程の音。
それに不審がりながらも、シャンプーの容器を再びプッシュすると…
にゃー
「………。」
どうやら犯人はコイツらしかった。
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