約束、ふたつ

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「魔物が来たぞ!!」 「倒せ倒せ!」 「やっつけろー!」 ガッ! 「う゛っ…」 「よっしゃ!当たった!」 「オレの方が石投げんの上手いんだぜ!見てろよ!」 ガツッ! 「…っ!」 「おぉすげー!」 「頭だ頭!」 「オレも次は当ててやる!」 「…あ、おい!魔物が逃げたぞ!」 「追えー!逃がすなー!」 …きっかけは、黒猫だった。 黒猫は不吉な生き物。 だから魔物なんだ、って誰かが言い始めた。 人間というのは悲しいもので… 集団においての結束力、仲間意識を芽生えさせるには共通の意思がなければならない。 それは時として何かを虐げることで発生する。 そこには自分もみんなの仲間だという安心感が生まれるからである。 いつの日からか始まった『魔物狩り』。 黒猫という魔物を退治するこの遊びは、彼らにとっては絶好の友達づくりの場であった。 しかし、特殊な力を持つがゆえに聞こえてきた悲痛な叫び。 『助けて…』 子供達から石を投げられ、蹴られる黒猫が零した声。 その黒猫を助けた時には、気付けば自分が標的にされていた。 ー…黒猫の言葉がわかるなんて頭おかしいんじゃねーの? ー…気持ち悪い奴。もしかしてコイツも黒猫の仲間? ー…魔物の仲間だ!追い払え! 石を投げられるのも、変な目で見られるのも、もう慣れた。 最近では自分の周りにいる大人達も、噂を聞いて異質な物を見るような目で見てくる。 でも、いつまでたっても… 「……ひっ…うぐっ…」 悔しくて、苦しくて、悲しくて… ただ屋敷の部屋で一人、泣いているしかなかった。 今日は月がとても綺麗で、雲一つない満天の星空。 「……明日はいいこと…あるかな……ね?」 にゃー 風が吹き抜けるベランダで、足元の黒猫に話し掛ければ、そう返答が返ってくる。 毎晩のように思うことだが、はっきり言って期待はしていない。
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