826人が本棚に入れています
本棚に追加
「……どんな子だろう」
窓越しに見える月を見上げ、そう呟く。
明日は本当に…いいことがあるだろうか?
「こんにちは~ジークさん」
「お久しぶりです。ファルスさんも元気そうで…」
次の日の昼時。
屋敷にやって来た三人のお客に、使用人達は慌ただしく動き回っていた。
アストレア家の長女、ユヤの縁談話。
それを持ち掛けてきたクロフォード家が、家族そろって訪れてきたのである。
現クロフォード家の当主、ファルスは客室に入るなりジークに頭を下げて挨拶をした。
それに対してジークもにこやかに挨拶を返し、やってきた三人に席をすすめる。
「…君が…フェイト君かな?こんにちは」
「………。」
「こらこらフェイト~、挨拶くらい返さないと…ジークさんに失礼だろ?」
暗いオレンジ色の髪をしているファルスに反して、明るいオレンジの髪をした、まだ幼い少年。
ジークが話し掛ければ、返ってきたのは沈黙と…何故かご機嫌ナナメのふて腐れた顔。
おそらく無理矢理ここに連れて来られたのだろう。
金髪ロングヘアーの優しそうな母親にしがみつき、席をすすめられたにも関わらず、一向にその場から動こうとしなかった。
「フェイト、ちゃんと席につきましょ?ね?」
「………。」
母親に宥められ、どうやら観念したらしい。
おとなしく席に向かうと、少年、フェイトは自分の席ではなく、母親の膝の上に座って、ジークの隣に座っている女の子をジッと眺めていた。
「ジークさん、その子が…」
「えぇ、ウチの長女の…」
「長女のユヤ・アストレアです。よろしくお願いします」
ファルスの問いに真紅の髪をお団子にした女の子は、姿勢を正してそうお辞儀をする。
まだ5才とは思えないほど、しっかりとしているが…やはりこの親あっての子、というべきか。
その容姿はとてもかわいらしく、ブルーの大きな瞳が印象的であった。
「妻の方は今ちょっと出てこれなくて…すみません」
「いえいえ、そんなお構いなく…」
謝るジークに、ファルスは慌ててブンブンと首を横に振る。
最初のコメントを投稿しよう!