約束、ふたつ

4/27
前へ
/73ページ
次へ
「……どんな子だろう」 窓越しに見える月を見上げ、そう呟く。 明日は本当に…いいことがあるだろうか? 「こんにちは~ジークさん」 「お久しぶりです。ファルスさんも元気そうで…」 次の日の昼時。 屋敷にやって来た三人のお客に、使用人達は慌ただしく動き回っていた。 アストレア家の長女、ユヤの縁談話。 それを持ち掛けてきたクロフォード家が、家族そろって訪れてきたのである。 現クロフォード家の当主、ファルスは客室に入るなりジークに頭を下げて挨拶をした。 それに対してジークもにこやかに挨拶を返し、やってきた三人に席をすすめる。 「…君が…フェイト君かな?こんにちは」 「………。」 「こらこらフェイト~、挨拶くらい返さないと…ジークさんに失礼だろ?」 暗いオレンジ色の髪をしているファルスに反して、明るいオレンジの髪をした、まだ幼い少年。 ジークが話し掛ければ、返ってきたのは沈黙と…何故かご機嫌ナナメのふて腐れた顔。 おそらく無理矢理ここに連れて来られたのだろう。 金髪ロングヘアーの優しそうな母親にしがみつき、席をすすめられたにも関わらず、一向にその場から動こうとしなかった。 「フェイト、ちゃんと席につきましょ?ね?」 「………。」 母親に宥められ、どうやら観念したらしい。 おとなしく席に向かうと、少年、フェイトは自分の席ではなく、母親の膝の上に座って、ジークの隣に座っている女の子をジッと眺めていた。 「ジークさん、その子が…」 「えぇ、ウチの長女の…」 「長女のユヤ・アストレアです。よろしくお願いします」 ファルスの問いに真紅の髪をお団子にした女の子は、姿勢を正してそうお辞儀をする。 まだ5才とは思えないほど、しっかりとしているが…やはりこの親あっての子、というべきか。 その容姿はとてもかわいらしく、ブルーの大きな瞳が印象的であった。 「妻の方は今ちょっと出てこれなくて…すみません」 「いえいえ、そんなお構いなく…」 謝るジークに、ファルスは慌ててブンブンと首を横に振る。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

826人が本棚に入れています
本棚に追加