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押すたびに猫の鳴き声がするシャンプーの容器。
はっきり言ってウザイうえに、猫の口の部分からシャンプーが出てくるというデザインはどうかと思う。
「……変な奴」
呟いた独り言。
当然猫の容器ではなく、ルルカにむけての言葉だが。
「わぁ!すっごく似合ってます!素敵です♪」
「………。」
風呂から上がるなりそう言って出迎えたのはルルカだった。
ピンクの布地に溢れんばかりのキ○ィの絵柄。
そんな男が着たら薄気味悪いパジャマを似合うと言われても、正直嬉しくないだろう。
こんな格好の“黒猫”を、かつての組織の連中が見たらどう思うのか…。
「あ、明日は“黒猫”さんのお洋服を買いにいきましょう♪先程セイラちゃんに電話して、セイラちゃんのお兄さんのお洋服を一旦借りることに成功いたしました!」
そう言ってビシッと敬礼するルルカに、ライは反応に困る。
しかし敬礼をしたまま、何かを期待するような眼差しで見られては、無反応でいるわけにもいかず…
「…えと……ありがと…な」
そう言い慣れない感謝の言葉を口にした。
しかしそれを聞いたルルカはというと…
「違いますよ!そういう時は…『よくやったな、ルルカ隊員。今後の活躍にも期待しているぞ!』です!」
不満そうに顔を近付けて意味不明なことを言う。
そして再び期待したような目で見てきたことから…おそらく言わなければならないのだろう。
「……よ、よくやった…ルルカ…隊員。…今後の活躍…に…も…期待して…るぞ…」
かなり恥ずかしいのを堪えて、やっとの思いでライは口にした。
するとルルカの表情はとたんに明るいものになり…
「えへへ♪はい!了解です!ルルカ隊員頑張ります!」
そう言って微笑み、敬礼するとバタバタと慌ただしくキッチンへ走って行った。
それにつられてライもキッチンへ向かうと、なんだか甘ったるい匂いが辺りに立ち込めている。
一体何が原因なのかと見回してみると…
「はい♪今日の夕飯です!一緒に食べましょう♪」
皿を持ったルルカがひょっこりと顔を出した。
その皿の上にあるのは紛れも無く…
ホットケーキ。
「…これ、夕飯?」
「夕飯です♪ほら、猫さんの形なんですよ!お風呂に入ってた間に頑張ったんです♪」
そう言って見つめてくるルルカが期待していることはおそらく…
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