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そんな父親をフェイトは一瞥すると、視線をテーブルの下に移し、意味もなく足をパタパタと動かして暇を潰していた。
「ファルスさん、申し訳ないのですが…今回の縁談は断らせていただきたいんです」
「え!?フェイトが生意気だから!?」
「あ、そういうわけではなく…」
思わずタメ語を使ってしまったファルスだが、ジークは気にした様子もなく丁寧な口調で述べる。
本当に貴族とは思えないほど、できた人だな~、なんて思いながらジークの話を聞くファルスは、貴族とは思えないほど、ガキっぽい人物である。
「実は子供達には恋愛結婚させるって決めているんですよ。ユヤがフェイト君と結婚したいと言うならいいですが…」
「絶対イヤ!」
「………。」
ジークの方を振り向いて声をあげたユヤに、フェイトではなく父親のファルスがダメージを受ける。
…まぁ親バカの彼としては、自分の子供が女の子にこれほどまでに拒絶されるのは耐えられなかったのだろう。
「フェイトゥオォ~!!父さん悲しいぞ!女の子にこんなこと言われ…」
「オレも絶対にヤダ!頼まれたって…むぐっ」
「フェイト、ダメでしょ」
突然そんなことを言い出したフェイトの口を、母親は慌てて塞いだ。
失礼な態度をとってジークが怒りはしないかと、恐る恐るジークを振り向くファルスだが…
「アハハ!フェイト君は素直な子だな~。ほら、フェイト君もこう言っていることですし…結婚くらいはフェイト君の好きにやらせてあげた方がいいんじゃないですか?」
「う゛~…」
笑顔で言われ、ファルスは言葉に詰まる。
早いうちから相手を決めておいた方がいいと思ったのだが、どうやらフェイトは反対らしい。
それならフェイトに任せてみてもいいかもしれないと思いはするのだが…
「…(不良系の女の子を連れてこられても困るしな~)」
将来の息子がどんな女の子を連れて来るのか、それが親バカのファルスには不安で仕方ないらしかった。
「せっかくですから、フェイト君もエルフィスの遊び相手になってくれると嬉しいんですけど…」
「エルフィス君って…確か長男の…」
「えぇ、三人の子供の中で1番上の子です。フェイト君の一つ年下なんですけど…」
自分そっちのけで進む会話にフェイトはまたしても機嫌を損ね、テーブルクロスの端を引っ張ったりして父親の気を引こうとする。
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