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しかしそんな行動も虚しく、母親までもがジークとの会話に夢中になっていた。
「…(なんだよみんなして…だいたいなんでオレが知らない子の遊び相手なんかしなきゃいけないんだよ)」
ふて腐れたフェイトは足をブラブラさせてテーブルに突っ伏す。
毎日父親の遊び相手をしているというのに、無理矢理連れてこられた場所で年下の子の面倒を見るなんて、たまったものではない。
早く帰りたいなどと思っていると、どうやら話しは一段落したらしい。
ジークは後ろを振り返り、ドアの方に向かって声をかけた。
「エルフィス、入っておいで」
ギギ、と音をたてて扉が開く。
しかし興味のないフェイトは窓の外の景色をボンヤリと見つめていた。
「へぇ…この子がエルフィス君ですか」
「いつも妹と弟の面倒を見てくれるから、オレも助かってるんです」
「随分と可愛い子ですね…ジークさんとそっくりといいますか…。
ほらフェイト、エルフィス君にご挨拶しないと!」
むくれたままのフェイトを見たファルスは、そう言って横からフェイトをつっつく。
渋々ながらも身体を起こし、フェイトは父親に引っ張られて母親の膝の上から降りた。
そして不機嫌ながらも顔をあげ、そのエルフィス君とやらと向き合った瞬間、
「…………。」
言葉を、失った。
サラサラの肩まである金髪。
それに一層際立つブルーの大きな瞳。
その姿形、どれをとっても文句のつけようがないくらい…
「可愛い……」
「……え!?フェイト!?」
息子の呟いた一言に、父親のファルスは耳を疑う。
ファルスだけではなく、ジークやユヤ、母親のリース、そしてなによりエルフィス本人が、驚いたような顔でフェイトを見つめた。
「この子…可愛い」
今度はハッキリと、目の前のエルフィスを指差しながら言う。
それに戸惑ったファルスだが、フェイトは目を輝かせながら急に父親の方を振り返った。
「父さん…この子の名前は!?」
「……え、だから…エルフィス君…だってば」
「エルフィス…エルフィスか」
勢いに負けてファルスがそう言えば、フェイトはそうやって何度もエルフィスという名前を繰り返す。
そして突然エルフィスの両手をにぎると、フェイトはとんでもないことを口走り始めた。
「オレと結婚してくれ!エルフィス!!」
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