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「……は!?ちょっとフェイト!?」
突然の愛の告白に、ワンテンポ遅れてファルスは驚きの声をあげる。
まさかこんなにも早く、息子が結婚相手を決めてしまうとは…などと思ったが、エルフィスは長男。
つまり男。
自分の愛するフェイトの将来のためには、是非ともアブノーマルな道には進んでほしくはない。
「フェイト…その子は…男の子だから…」
「愛に性別はカンケーないじゃん!オレ、エルフィスとじゃなきゃ結婚しない!」
「………。」
愛に性別は関係ない、なんてどこで覚えたのか…。
これではクロフォード家の先行きが暗雲に包みこまれたようなものだ。
「エ、エルフィスおにーちゃんに触らないでよ!変態!」
「ユヤ、そんなこと言ったらダメだって」
お兄ちゃんのピンチに、すかさず妹のユヤがフェイトの手を払いのける。
しかしジークはそんなユヤを抱き上げると、もといた席へとユヤを座らせた。
「フェイト君、ずいぶんエルフィスのこと、気に入ってくれたみたいだね?」
「うん。オレ、エルフィス以外は考えられないから」
「アハハ、そこまで言ってくれるとオレも嬉しいかな。エルフィスがフェイト君と結婚したいならエルフィスを嫁がせてもいいけど…」
「ホントに!?いいの!?ジークさん!」
「ちょっ、ジークさん!マジですか!?エルフィス君を嫁がせるって…」
「エルフィスがいいならオレはいいですよ」
「………。」
いくら自由に結婚させるとはいえ、自由すぎるだろ!という不安そうなファルスと…
目を輝かせながらエルフィスを見つめるフェイト。
少し困ったような顔をした母親、リースに…
納得がいかなそうな長女のユヤとニコニコと幸せそうなジーク。
そして戸惑ったような表情を浮かべるエルフィス。
それぞれの感情が行き交う中、不意に壁の時計が14時を報せる鐘が鳴った。
「…ファルスさん、この後の予定は?」
「あ、特にないですけど…」
「だったらゆっくりお茶でもどうですか?」
「……じゃあ…お言葉に甘えて…」
突然話題が切り替わり、ファルスは困惑しながらもジークの誘いに頷く。
…なんというか、ジークはいつもニコニコとしているのだが、その言葉には何故か有無を言わさない不思議な力がある。
こういうのをカリスマというのだろう。
この人が貴族界のトップにいるというのも頷ける。
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