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「えーと…ユヤは弟の面倒、見てくれると嬉しいんだけど…」
「…アイツ、生意気だから嫌い」
「ほら…ヴィティスはまだ4才なんだし…お姉ちゃんのユヤがそんなこと言ったらダメだろ?」
「………父上がそう言うなら…」
どうやら折れたらしいユヤは、椅子から下りるとファルスとリースにお辞儀をして客室から出ていく。
ヴィティスというのは三人兄弟の末っ子のことらしい。
エルフィスが嫁ぐとなれば、次男のその子がアストレア家を継いでいくのだろう、などとファルスはボンヤリと考える。
「それで…エルフィスはフェイト君に、屋敷を案内してあげてくれないかな?」
「……うん」
「エルフィスが案内してくれるとかマジ嬉しいんだけど!さすがジークさん♪」
「こ、こらフェイト…ジークさんに対して失礼だって…」
「いや、いいんですよ。こういう素直なところがフェイト君の良いところですから」
素直なのと言葉遣いが失礼なのは違う気もするが、ジークに言われてはファルスは引き下がるしかない。
「…あ、あの……案内…するから…」
「エルフィス~よろしく~♪」
「……う…ん…」
ベタベタとくっついてくるフェイトに、エルフィスは困惑の表情を浮かべた。
どうやら友達にはなれそうだが、これもいつまで続くのか…。
しょせん人間の感情なんて信用できないのだ。
今まで仲良くしていたと思えば、次の日には全く相手にされないなんてよくあること。
それでも…
ほんの一瞬だけでも仲良くしてくれれば、その間は例え偽りであっても嬉しいのだ。
「エルフィス、フェイト君をあんまり遠くまで連れて行ったらダメだよ?」
「フェイト、エルフィス君に迷惑かけたら父さんもう一緒に遊んであげないぞ!」
「……遊んであげてるのはオレのほうじゃん。
エルフィス行こ♪」
ちゃっかり手まで繋ぐと、エルフィスが案内するはずなのに、フェイトが先に歩き出す。
にこやかに手を振るジークと、不安そうなファルスとリースに見送られ、二人は客室を後にした。
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