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「うわっ!すっげー…図書館みてぇ!」
「ここ…図書室。学者さんとかも利用してるんだって」
「へぇ~…」
天井までビッシリと、見渡す限り、本、本、本…。
世界中の本が集まっているのではないかと思わせるその光景に、フェイトは圧倒されていた。
ジークの屋敷はいろんな政治家やら貴族やらが集まって会議をするため、住むのに必要以上な敷地を使って、屋敷というよりまるで城のように建てられている。
この図書室とやらも、フェイトの屋敷の4分の1を占めているのではないかとさえ思ってしまうほどだ。
ステンドグラスや天井の吹き抜けからの自然の明かりが室内を照らし、どこか落ち着きのある空間をつくり出している。
「な~んか難しそうな本ばっかり…」
「そんなことないよ。見てみると結構面白いし…」
「え゛!エルフィス読んでんの!?」
「うん、ちょっとだけ…」
自分だったら目次だけで寝れるな、なんて思いながらフェイトは試しに近くの棚から本を一冊引っ張り出す。
分厚さからして読む気はないが、パラパラとめくってみれば、それはほとんど…
「げっ!英語じゃん…。エルフィス英語読めんの?」
「あ、英語だったら…大丈夫」
「マジ!?さっすがエルフィス♪じゃーこれ!これなんて書いてあんの!?」
英語だらけの本にビビったフェイトだが、エルフィスが英語を読めると聞いて興奮気味に本の一節を指し示した。
するとエルフィスは遠慮がちにフェイトに近寄り、一緒になって本を覗き込む。
「これって……どこ?」
「ここ!この…三角っぽい…確か、エー、っていうアルファベットと、傍線の形の…」
「…この部分?ここだったら…
『Although the world is full of suffering, it is full also of the over coming of it.』
…これ、ヘレン・ケラーって人が言った言葉だね」
「………えーと…その人の名前は聞いたことあるけど…」
「訳すと、
『苦難に満ちた世界には、それに打ち勝つ力もまた満ちているのです』
っていう意味だよ」
「…へぇ…なんか良い言葉じゃん」
「………。」
エルフィスの丁寧な解説付きでようやく理解したフェイトは、そう言って本の挿絵にある女性の写真を眺めた。
そして何気なく隣のエルフィスに視線を移したフェイトだが、エルフィスはといえば、なんだか晴れない顔でボンヤリと、その本を見つめている。
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