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「……エルフィス?」
「………。」
「エルフィス~?」
「…!あ、ご、ごめん…なに?」
「…いや、なんか…エルフィスがボーッとしてたから」
「………。」
心配そうに顔を覗き込んでくるフェイトに、エルフィスの胸が僅かに痛んだ。
自分なんかがどうしてこんなに心配されるのかが分からない。
同時になんだか自分がフェイトのことを騙しているような気がして…罪悪感が満ちてくる。
「………。」
「え?あれ?エルフィス?あ、ちょっと待てって!」
無言のまま本をしまうと、エルフィスは図書室から出て早足のまま広い廊下を歩き始めた。
突然のことにフェイトは慌てて追い掛けるが、エルフィスは速度を緩めようとはしない。
「お~い!エルフィスってば~!」
「………。」
「な、なに?怒ってんの?だったらゴメ…」
「来ないでよ!」
「………へ?」
「……ついて…こないで…」
「え゛!?エルフィス……あっ!」
何がなんだか分からないうちに、エルフィスは走って廊下の奥の方へと消えていってしまった。
フェイトはただ茫然とその後ろ姿を見守るしかない。
「…(オレ…なんかしたっけ!?)」
思い起こしてみても、怒らせるようなことをした心あたりは全くなかった。
本当に突然のことで、疑問符ばかりがフェイトの頭に浮かぶ。
「…とりあえず…エルフィスを探さないと」
こんなに広い屋敷の中で見つけだせたら運命だよな、なんてポジティブ思考に切り替えると、フェイトは自分のお姫様を探すべく、とりあえずエルフィスの走って行った方向へ歩きだした。
ー…やっぱりそうなんだ?本当に可哀相
ー…次男のヴィティス様も大変よねぇ
「…ん?」
廊下から見えた、とある部屋の僅かに開いたドア。
そこから漏れる室内の光と話し声にフェイトは足を止め、そっと部屋の中を覗き込む。
するとどうやらここはメイド達の休憩所になっているらしい。
複数のメイド達がそれぞれお菓子をつまみながら口々に話し、ぶつぶつと文句のようなものを垂れていた。
「だいたいさ、長男があの子っていうのが間違いなのよ!」
「あーエルフィス様でしょー?ホントに気味悪いわよね、あの子。最初は子供だからって思ったけど……私もそろそろ限界。笑顔作んのも楽じゃないしー?」
「でもさーエルフィス様も気付いてるっぽくない?私達が嫌ってんの」
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