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「………。」
ゆっくりと近づき、うずくまるエルフィスの隣りに腰かける。
すると気付いたのか、一瞬エルフィスの肩は大きく揺れ、様子をうかがうように僅かに顔を上げてフェイトを見てくる。
フェイトを見た瞳は溢れそうなほどに涙が浮かび、それが零れないように堪えているのだと、すぐに察しがついた。
「……こないで……って…言った…」
「…………。」
再び顔を腕に埋めると、弱々しい声で呟かれる。
よくわからないが拒絶されていい気はしないだろう。
それでもフェイトは動くことなくエルフィスを見つめる。
根拠はなかったのだが…
こうして傍にいることが、今のエルフィスには必要なのだと、そう直感していた。
「…………。」
「…ボクに…近づかないで」
「やだ。エルフィスの隣りにいる」
「………。」
「オレ、エルフィスのこと好きだから離れたくない」
「……そんなこと、軽々しく言わないでよ。最初だけのくせに」
「……え?」
震えた声。
言っている意味が分からなくて思わず聞き返してしまう。
しばらく沈黙が降りた後、やがてエルフィスは絞り出すような声で告げた。
「……よく…知りもしないくせに。知ったら…離れてくくせに」
「……エルフィス?」
「そういうこと、口にしないで。嫌われるってわかってるから……その時が怖くなるから……優しく、しないでよ」
「…………。」
自分はこんなにエルフィスが好きなのに、何故この少年は嫌いになるなんてわかりきったように言うのか。
知らないことがあると言うのなら、知りたい。
それを知ったうえでもう一度好きだと言いたい。
何故だかはわからないが、フェイトにはたとえエルフィスが何か隠していたとしても、それを含めて好きになれるという自信があった。
だから…
「じゃあデートしよう!エルフィス!」
「…………え?」
「オレ、もっとエルフィスのこと知りたいからさ!だからデート♪」
「…………。」
「デート終わった後もオレ、絶対にエルフィスのこと好きだから!それを証明するためにも……な?」
「…………。」
顔を上げれば目の前にはキラキラとした瞳で見てくるフェイト。
そんな顔が出来るフェイトが凄く羨ましいと思う反面、嫌われたくないという思いが強くなる。
しかしエルフィスの意思なんてお構いなしにフェイトは腕をぐいぐいと引っ張ってきた。
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