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長くて幅の広いすべり台や、数多く設置されている遊具。
広場では子供達が元気にボールを追い掛け回している。
目をキラキラと輝かせているフェイトだが、エルフィスは顔を俯かせたまま動こうとしない。
とりあえず近くのベンチにエルフィスを座らせると、フェイトもその隣に座り、しばらく無言のまま公園の風景を眺めていた。
冬の厳しい寒さも終え、周囲に植えられた桜の木は所々ピンクに彩られている。
数週間前までは姿を見せなかった虫達も、ちらほらと確認でき、羽を広げたり、あるいは地面を歩いたりして徐々に活気を取り戻していた。
男の人が小型犬を連れて散歩しているのを目にすると、フェイトはその犬が視界から消えるまでジッと目で追い掛ける。
あの茶色くて耳が垂れた胴長の犬は何といったか…。
そんなことばかり考えていると、フェイトの服の裾を小さい手が遠慮がちに引いた。
「……あ、あの」
呼ばれた声に振り返れば、そこには不安を宿した瞳で自分を見ているエルフィスの顔。
フェイトがずっと話さないので嫌われてしまったのかとでも思っているのだろう。
様子を窺うような、不安に揺れる目を見て、フェイトは慌ててその金髪を優しく撫でてやった。
「ゴ、ゴメン。えーと…その…」
デートといえば公園。
そんな単純な考えだけで来てしまったことをフェイトは今更ながらに後悔する。
…この先どうするかを考えていない。
無言でいたことをエルフィスに謝ったのはいいが、この次にどうすべきか…。
公園で遊ぼうかとも思ったフェイトだが、エルフィスはどうやら乗り気ではないというのも態度からわかる。
なんとなくだが……あまり遊具がある場所や広場には近づきたくなさそうなのだ。
「えーと……あ!飲み物買ってこようか?」
「……ノド渇いてないから大丈夫」
「そっかー……エルフィス、何して遊びたい?」
「………サッカー…やってみたい…」
エルフィスのちょっと不思議な言い方にフェイトは首を傾げた。
『やってみたい』ということは、サッカーをしたことがない、ということなのか。
さりげなくエルフィスの視線を追ってみると、そこには広場でサッカーをしている子供達がいた。
どうやらそれを見てエルフィスは言ったらしい。
「サッカーやったことないの?」
「……うん」
「ルール知らないとか?」
「……ルールは…知ってる。いつもここで見てるから」
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