約束、ふたつ

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「いつも見てるって、やってみたいなら声かければいいんじゃん?」 「………う…ん…」 何故か俯いてしまったエルフィスを見て、フェイトは慌ててどうすべきかを考える。 もしかしたらエルフィスは恥ずかしくて声が掛けられないのかもしれない。 知らない人でも平気で話しかけられるフェイトからしてみれば、何をためらうことがあるのか、と思うのだが、大人しいエルフィスのことだから慣れていないのだろう。 それならばと、フェイトはエルフィスの手を引いたままベンチから立ち上がる。 「よし!じゃあオレが声を掛けるから、エルフィスも仲間に入れてもらおう!」 「………え?」 途端にエルフィスの身体が強張り、表情に恐怖が過ぎったのをフェイトは見逃さなかった。 しかしそれも慣れないためだろうと判断したフェイトは、構わずにグイグイとエルフィスの手を引っ張っていく。 「大丈夫だって!慣れれば簡単だからさ」 「…あ……でも…ボク…」 「お~い!仲間にい~れて~!」 フェイトの馬鹿デカイ声は広場中に響き渡り、すぐに子供達は振り返った。 広場の喧騒は止み、視線は一斉にフェイトとエルフィスを捉える。 「エルフィスはサッカー初めてっぽいけど、一生懸命頑張るってさ♪そんなわけで、よろ…」 「来たぞ!魔物だ!」 「逃げろー!!」 「………へ?」 今まで賑やかだった広場が今度は違った賑やかさで満ち、子供達は二人を振り返ることなく駆け出して行った。 たちまちにして彼らは姿を消し、中央に残されたサッカーボールをフェイトは茫然としたまま見つめる。 一体何が起きたのか、理解が出来ない。 魔物がどうとか言っていたな、と思い後ろを振り返ってみるがそんな物は存在していなかった。 先程から動こうとしないエルフィスに視線をやると、エルフィスはどこか輝きのない瞳でサッカーボールに見入っている。 「えーと…なんだろ。あの子達もビックリしちゃったのかな…。とりあえずもう一度声掛けてみて…」 「いいよ……もう」 「……エルフィス?」 「…もう、いいから」 「…………。」 着物の裾をギュッと握りしめ、ポツリと呟いた一言に、フェイトは言葉を失った。 思えば自分はエルフィスの笑った顔を一度も見ていない。 どうにかして笑わせてやりたい。 そう思ったフェイトはエルフィスの手をしっかりと握り、力強い声でこう告げた。
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