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なるべく刺激しないよう、探るように声をかける。
すると男の子が一人、フェイトの方を振り返ったのだが、エルフィスを見るなり何事もなかったかのように遊びを続行し始めた。
するとそれにムカついたのか、フェイトは走って行こうとした男の子の腕をつかんで無理矢理引き止める。
「まてって!無視すんなよ!」
「な、なんだよおまえ!!離せよ!」
「『なんだよ』はこっちのセリフだっつーの!なんでシカトされなきゃいけないんだよ!」
「おまえもその魔物の仲間なのか!?だったらこっちに来るな!」
「……は?魔物の…仲間?」
再び出現した『魔物』という単語。
意味がわからず首を傾げていると、周りで走り回っていた男の子の仲間達がゾロゾロと集まってきた。
こうして見てみると、ざっと20人はいるだろう。
だがそこにいるどの子供達も、まるでフェイトを不審人物のような眼差しで見つめている。
……いや、フェイトではない。
その隣にいる……エルフィスを。
「なんだよ、知らないのか?そいつ、魔物なんだよ」
「近くにいると殺されちゃうんだ!」
「すっげー怖いんだぞ!」
「この前オレ、あの魔物に殺されそうになったんだ!」
「あっちに行け!追い払えー!!」
何がなんだか理解が出来ないままフェイトが突っ立っていると、突然集団の中から一つ、石がエルフィスに向かって投げられた。
それはエルフィスの額に当たり、切れた箇所から血が滲み出てくる。
「そうだ!あっちに行け!」
「邪魔するな!」
「気持ち悪い奴だな!」
「え!?お、おまえら何やって…!」
次から次へとエルフィス目掛けて投げられる石に、フェイトは思わず絶句した。
ただうずくまって耐えるだけのエルフィスを、どうにかして助けようとフェイトは周囲を見渡すが…
周りには、絶望しか存在していないことに気付かされる。
ただ黙って通り過ぎていく人。
遠くから冷たい瞳で見守る人。
寒気がするような冷ややかな微笑を浮かべて眺める人。
ここにいる大人達は誰一人として味方しない。
広い公園のはずなのに…
なんだか酷く狭く、暗い世界に取り残されたような、そんな錯覚に襲われる。
「あ!逃げたぞ!」
「やった!魔物退治成功だ!」
走って行ったエルフィスを見て喜ぶ子供達。
あまりに衝撃的すぎて、フェイトは一歩も動くことができなかった。
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