約束、ふたつ

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エルフィスの背中を見送っていたフェイトだが… そんなフェイトに、子供達の中の一人が馴れ馴れしく近付いてくる。 「あいつさ、頭おかしいんだって。母さんとかも『気持ち悪いから近付いたらダメだ』って言ってるし」 「…………。」 「魔物と関わったら魔物の仲間だって思われるからさ、ホント、友達やめた方がいいよ」 ―…あぁ、そうだったのか―…。 この子供の話を聞いて、フェイトはようやくわかった気がした。 ……エルフィスの、あの表情の理由。 子供達はこうやって自分達の仲間を増やしていっていたのだ。 エルフィスを守れば自分が狙われる。 結局人間というのは自分が1番可愛いのだから、彼に味方する人なんて当然、いるはずもなかっただろう。 最初は一緒に遊んでいたのに… 自分が虐められていると知るなり、突然態度を変える友人。 そんなものばかり見てきたから、フェイトのことも完全に信用しようとしなかったのだ。 「…(じゃあ…どうすればいい?)」 残された… 標的とされた人間は、どうすればいい? 所詮“話し合い”だの“自分の自由を主張する”だの、きれいごとは通じない。 解決されるのは表だけで、どうせまた違った苦しみを味わうはめになるのだ。 独りではどうしようも出来ない、だからこそ誰かにすがることで救いを求めようとする。 求められた人間は自分可愛さにその手を振り払うことも容易だが…必死に助けを求めて伸ばされたその腕は、ただ何も言えずに次の助けが来るまで絶望の中に浸っているしかない。 残された人々が欲しいもの… それは、その腕をしっかりと掴むことで伝わってくる―…人の、温かさ。 「あ、そうだ。サッカー仲間に入れてやるよ。どっちのチームに………ってどこ行くんだよ!?」 気がつけば無意識のうちに走っていた。 早く…早く行かなければ。 今のエルフィスには、家族以外の…誰かの温もりが必要だから…。 終わった…。 自分がああいう扱いを受けているということが、バレてしまった…。 「………どうせ……最初から…期待してなかったし…」 嘘だ。 自分はあの瞳に期待していた。 もしかしたら…と、彼なら伸ばした腕に気付いて、もしかしたら……その腕を掴んでくれるんじゃないかと、そう期待していた。 自分が期待していたことを認めてしまえば、傷は深くなる。
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