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それは、エルフィスにとっては予想もしていなかった言葉。
初めて感じた他人の温もりは、こんなにも温かいものなのだと思い知らされた。
違う場所で生まれて、違う場所で育つ。
考え方も経験したことも人それぞれだけれども、
他の誰かに、温もりを与えることはできる。
時には拙(つたな)い言葉で。
時には抱きしめることで。
そうやって誰かに温もりを与えることが出来るのは人間だけれども…
でも、それを誰よりも必要としているのも、同じ人間なのかもしれない。
「……エルフィス、大丈夫?」
「…………うん」
震えの止まった身体に気付いたフェイトは、そっとエルフィスを離してやった。
隣で自分の顔を見上げてくるエルフィスには、先程までの恐怖感は宿ってはいない。
ただ、どこか不安げな感じが残るエルフィスの表情にフェイトが心配の念を抱いたところで、エルフィスはか細い声で、ポツリと呟いた。
「……ボク…動物と……話せるんだよ?
気持ち悪く…ない?」
…突然の告白。
その言葉に、フェイトは一瞬自分の耳を疑う。
動物と話せる…。
それは本当なのか…。
しかしフェイトの心に宿ったのは、『気持ち悪い』でも『不気味な奴』でもない。
ただ純粋な…
「すっげー!!エルフィスかっこいいー!!動物と話せるって……なんか超能力者っぽいじゃん!動物だったらなんでも話せるってこと!?」
純粋な、子供らしい感情。
周囲の人間の意見に左右されることのない、自分の素直な意見。
まさかこんな反応をされるとは当然、エルフィスも思ってはいなかったのだろう。
瞳をキラキラさせて自分に詰め寄るフェイトを、ただ他人事のようにボンヤリと見つめ…
あまりにも意外すぎたフェイトの言葉に、嬉しさよりも驚きの方が勝ってしまって、返答するまでに時間がかかってしまった。
ワンテンポどころか、ファイブテンポくらい遅れた形で、エルフィスはやっとの思いでその答えを口にする。
「………う、うん。動物だったら……なんでも…」
「じゃあさ、じゃあさ!えーと…………あ!この猫!この猫は何て言ってんの!?」
エルフィスの返答に対してだいぶ興奮気味なフェイトは、中庭を悠々と歩いていた黒猫を乱暴に引っつかんだ。
すると黒猫は叫び声のような悲鳴のような…
よくわからない奇声を発しながらジタバタとフェイトの腕の中を暴れまくる。
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