約束、ふたつ

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「………えと…正直に…言っちゃっていいの?」 「え?いやまぁ…何て言ってるか知りたいわけだし♪」 何故か戸惑うエルフィスに、フェイトは逃がさないようにガッシリと黒猫を固定し、満面の笑みで答えた。 必死にフェイトの顔を爪で攻撃しようとする黒猫だが、フェイトは器用にその攻撃を避けている。 「で!?何て言ってんの?」 「………………。」 ヴニャアウ!ニャガウ! 「…………あの…」 「うんうん」 「…………『いきなり抱き着いてきてんじゃねー!離せこのオレンジ変態低悩野郎』……って言ってる…」 「……あぁ……そう…」 腕の中の黒猫を一瞥し、先程までの興奮が一気に冷めたフェイト。 静かに離してやれば、黒猫は瞬く間にフェイトの腕から逃れ、エルフィスの足元へと避難した。 ……よほどこの猫はフェイトが嫌いなのか。 離れてもなお、フェイトに向かって威嚇する黒猫に、エルフィスはなんだか複雑な心境を抱く。 「フェイトォー!フェイトォー!!どこに行っちゃったんだー!?そろそろ帰るぞー!」 「…!……あ…」 屋敷から聞こえてきた馬鹿デカイ声。 これは紛れも無く、あの騒がしいフェイトの父親の声だった。 なんだかんだで、あれから随分と時間が経ってしまっている。 花壇の花を揺らす風は昼間よりも冷たく、思わずフェイトは身震いしてしまった。 早く温かい室内に戻りたい……。 そう思って慌ててベンチから飛び降り、室内へ続くドアに駆け寄ろうとした時、 「……もう……帰っちゃうの?」 淋しげな瞳でそう尋ねられ、フェイトは走りだそうとした足をその場で止めた。 「……エルフィス……」 「…………。」 一瞬父親や母親、それからジークに頼んでエルフィスの屋敷に泊めてもらおうか……などと考えたフェイトだったが、恐らく……というより絶対に無理な話だろう。 今日はクロフォード家に仕えてくれている執事のロビンの誕生日。 屋敷に戻ったら誕生日パーティーを執り行う予定なのだ。 それにジークに迷惑をかけるから、という理由で親が許してくれるはずがない。 しかしだからといって、このままエルフィスと別れるのも、なんだか気が引ける。 次はいつ会えるかなんて、自分にはわからないのだから。 そう思案していたフェイトだったが… 「…あ!そーだ!エルフィス、それじゃあオレと“約束”しよう!」
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