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「………………え?」
「どんなに敵がいようと、どんなに不利な状況であろうと……オレだけはずーっと、エルフィスの味方だから。
悲しい顔なんてさせないよう、オレが絶対に守ってやる!ってことだよ♪」
「………………。」
あまりにも突然すぎたそれに、エルフィスは一瞬わけがわからず茫然とする。
―…だって、本当に突然すぎた。
今まで自分が望んでいた言葉。
それがまるで価値のない物だったんじゃないかと疑ってしまいそうになるほど、フェイトの口からいとも簡単に述べられてしまったのだ。
こんなに驚いてしまったのは、自分が望む言葉というのは、いくら手を伸ばしても届かない、あの雲のような物なのだと、そう思い込んでいたからだろう。
「これが2つめの約束!まぁオレはもちろん2つとも守るからさ、エルフィスも安心して待っててくれちゃっていいから♪」
「…………。」
「ほらほら、約束っていったら指切りだよな」
実に楽しそうに、笑いながら小指を差し出してくるフェイト。
……ただ、この約束には欠点がある。
それを彼は気付いているのか。
エルフィスはそんな思いで目の前のフェイトの指を見つめた。
それは……ただこの約束は、感情一つで提案されたものだということ。
フェイトがエルフィスに好意を持っている。
それがあるから成り立つ約束。
逆に言えば、フェイトがエルフィスに興味を持たなくなった時……
この2つの約束は、どちらも守られることはない。
まだ『またこの屋敷で会おう』などという感情は関係ない行動だけの約束ならば、果たされるかもしれない。
しかし『プロポーズする』ことも、『味方であり、守り抜く』ことも、相手を想って初めて成立することなのだ。
うつろいやすい人間の感情が、いつかもわからない時まで維持されるなんて、エルフィスからしたら考えられないことだった。
―…きっとこう言いながら、彼はすぐに自分のことなんて忘れてしまう。次に会った時には、プロポーズしようなんて、そんな感情すら沸き上がらないだろう。
そう、どこか冷たい眼差しで静かに分析している自分が、なんだか酷く醜(みにく)い生き物のように思えた。
……いつからこんなに自分は、人の感情を素直に受け取れなくなってしまったのだろうか。
気が付けばいつも、屈折した形から覗き込んでしまっている。
「ほら、エルフィス。手」
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