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「……(なんか……怖そうな人だな)」
善く言えば度胸がある人間。
悪く言えばただの生意気なクソガキ。
おそらく世間の大人達は彼のことをこう思ってきたのだろうと、なんとなく察しがついてしまう。
……まぁ人は見かけによらないというが……
人間の本質の8割は第一印象で決まるというのだから、もう少し態度を考えるべきだとも思う。
そうやってライが勝手にあれこれと思案していると、どうやら事態は収まってきたらしい。
他の女子生徒と男子生徒の介入によって、なんとか事無きを得たようだった。
それに一安心し、暴力事件に発展しなくてよかった、なんて思っているのもつかの間……
「……(もしかして……座ってるのオレだけ?)」
よくよく周囲を見渡してみると、席に座っているのは自分だけ。
しかも先程の騒動で人口は教室の前の方に集中してしまい、ライがいる後ろの方は見事なくらい誰もいない。
ただ一人、ポツリと座るライだけに、春の風は嘲笑うようにぶつかってくる。
「……(なんか話し掛けるのも今更だしなぁ……)」
仲良しグループが出来つつある中に入っていくのは、なんだか申し訳ない気持ちになる。
どうして先生からの頼みを引き受けてしまったのだろう、なんて考えてもみるが、自分が引き受けてなければ他の人がこうなっていたのかもしれないのだ。
それはそれでライにとっては嫌なことに違いない。
「……(でも……友達とか、べつに必要ないよな。今まで友達いなくたって生きてこれたわけだし)」
自分を納得させようと一人そう考え、心の中で頷く。
でも今まで無縁だったからこそ、友達がほしい。
そう思っているのも外ならぬ自分の正直な気持ち。
それでもやっぱり、他のみんなとは違う。
人の命を奪う“黒猫”だった自分。
こんな自分が友達なんて贅沢(ぜいたく)なものを望んでいいのだろうか……?
「もしもーし!聞こえてるか?なぁ?」
「……!」
「……なんだよ、そんなにビックリした顔するなよ」
いつの間にか目の前にいた人物に、ライは驚きのあまり頭の中が真っ白になった。
なんというか……
相当“黒猫”時代の癖(くせ)が抜けてしまっている。
誰かが近付いて来ていたのも気がつかないなんて。
やはりあの行動が読めない不思議な少女、ルルカと暮らしていたのが原因だろうか……。
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