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もはや何がチャーシューで何がもやしなのか……具が判別できないほど赤く、ごってりとしたラーメンを、ライは茫然としたまま覗き込む。
「せっかくオレ様がてめぇみたいなウザイ野郎にチャンスをあげてるっつーのに……食えねぇのか?」
「…………。」
「……おい、食うなら食う、食わねぇなら食わねぇでハッキリしろボケ!」
「ってグレン!それ以上はヤバ―……」
「あ゛!?何か言ったかジェイ!?こいつが女みてぇにうじうじしてっから腹立ってんだよ!!」
今度は一味唐辛子と七味唐辛子の両方をぶちまけたグレンに、ジェイはなんだか頭が痛くなってきた。
……このライという少年。
逆らうでも怒るでもなく、為すがままにされている。
こういった気の弱いなよなよタイプは、グレンが最も嫌い、ウザがっているタイプである。
初日から早々彼に目をつけられては、平穏無事な学園生活はもとより……いったい何日耐えられるだろうか。
「……お、おいグレン?どこ行くんだよ」
「…………別のとこで食う。こんな奴と一緒に食ったら飯がまずくなんだろーが」
「あのな……おまえどんだけライのこと嫌いなんだよ。まだ会ったばっかだろ?少しは友好的に……」
「だから無理なモンは無理っつってんだよボケ。そもそもコイツとはこれから先仲良くやっていける気がしねぇし仲良くしてやる義理も―……」
おぼんを持って立ち上がったグレンの目が一点をとらえ、グレンはその先の言葉を失った。
何故か立ち尽くしたままのグレンに気付き、シドとグレンのやり取りを黙って見守っていたジェイは、何事かとグレンの視線を追う。
するとその視線の先は自分の隣の席に注がれているものだと察し、ライがどうしたのかと確認する前に……
ジェイの耳に、ズルズルという何かをすする音が、直ぐさま飛び込んできた。
「…………ラ、ライ?」
「…………。」
「お、おまっ……何食って……」
真っ赤な麺を口に流し込んでいくライを見て、思わず青ざめるジェイ。
それに反して辛さのためか、ライの顔はだんだんと赤みが増していき、目は今にも泣き出しそうなくらい潤んでいる。
果たして味がするかはわからないが、しばらく咀嚼(そしゃく)し、やっとの思いで喉に通した後、やはり相当つらいのか……
まるで食べ物がつかえたかのように突然むせ始めた。
「ケホッ!……ゲホ、ゲホっ!」
「お、おいライ!大丈夫か!?」
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