花は折りたし梢は高し

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「よっ、グレン。そんなにコソコソしてないで中に入った方がいいんじゃねーの?」 「っ!?」 なかなか入ってきそうにないので、仕方なくシドは保健室のドアを開けてやった。 すると気付かれていたとは思っていなかったらしい。 ドアに全体重をかけていたグレンは前に転びそうになり、ややよろめきながらも保健室に入ってしまう。 するとすぐに長椅子に座っているライと目が合った。 「ライのことが心配で様子見に来たんだろ?ほら、ライはあそこにいるから」 そう言って椅子の方を指差すシド。 言われなくてもライと目が合っているのだから、そのくらいわかっていた。 だが、『心配で様子を見に来た』というシドの言葉に、グレンの心は素直になることを許さない。 「……なっ……ざけんなボケ!!なんでオレ様がこいつを心配してやんなきゃいけねーんだ!?オレ様はこの金髪がくたばったかどうか見に来ただけだっ!!」 「お、おいグレン……」 「二度とオレ様の前にツラ見せんじゃねぇ!!迷惑なんだよテメェは!!」 言い終わると同時に、グレンは手に持っていたカバンをライに投げつけた。 なんとか両手でキャッチしたライだったが、勢いよく投げられた物だからか、微かに手が痺れる。 そしてライが謝罪の言葉を告げようとした時には…… 「グレン!?どこ行っ……おい、待てって!」 入口のドアが勢いよく閉められ、走り去って行く足音が廊下から聞こえてくるだけとなっていた。 「…………。」 追い掛けようとしたシドも諦めたのか……勢いよく閉められたために、逆に開いてしまっている入口のドアを閉め、ライのもとへ戻ってくる。 黙ったまま体重計に乗っていたジェイも、そこから降りるとライの近くに寄ってきた。 「あー……えと……グレンも悪気はないっていうか……」 「…………。」 完全に沈黙しているライにどう声を掛けたらいいかわからず、ジェイはぶつくさとフォローを入れ始める。 グレンに言われた言葉がグルグルと頭の中を駆け巡っているまま、ライは静かに手の中のカバンに視線を落としていた。 するとここで初めて、不思議なことに気付く。 「……このカバン……」 「え?」 「このカバン…………オレのカバンだ」 「……ライの?」 グレンが持っていたのだから、てっきりグレンのカバンだと思っていた。 だがどうやら投げられたこのカバンは、ライの物だったらしい。
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