826人が本棚に入れています
本棚に追加
「よっ、グレン。そんなにコソコソしてないで中に入った方がいいんじゃねーの?」
「っ!?」
なかなか入ってきそうにないので、仕方なくシドは保健室のドアを開けてやった。
すると気付かれていたとは思っていなかったらしい。
ドアに全体重をかけていたグレンは前に転びそうになり、ややよろめきながらも保健室に入ってしまう。
するとすぐに長椅子に座っているライと目が合った。
「ライのことが心配で様子見に来たんだろ?ほら、ライはあそこにいるから」
そう言って椅子の方を指差すシド。
言われなくてもライと目が合っているのだから、そのくらいわかっていた。
だが、『心配で様子を見に来た』というシドの言葉に、グレンの心は素直になることを許さない。
「……なっ……ざけんなボケ!!なんでオレ様がこいつを心配してやんなきゃいけねーんだ!?オレ様はこの金髪がくたばったかどうか見に来ただけだっ!!」
「お、おいグレン……」
「二度とオレ様の前にツラ見せんじゃねぇ!!迷惑なんだよテメェは!!」
言い終わると同時に、グレンは手に持っていたカバンをライに投げつけた。
なんとか両手でキャッチしたライだったが、勢いよく投げられた物だからか、微かに手が痺れる。
そしてライが謝罪の言葉を告げようとした時には……
「グレン!?どこ行っ……おい、待てって!」
入口のドアが勢いよく閉められ、走り去って行く足音が廊下から聞こえてくるだけとなっていた。
「…………。」
追い掛けようとしたシドも諦めたのか……勢いよく閉められたために、逆に開いてしまっている入口のドアを閉め、ライのもとへ戻ってくる。
黙ったまま体重計に乗っていたジェイも、そこから降りるとライの近くに寄ってきた。
「あー……えと……グレンも悪気はないっていうか……」
「…………。」
完全に沈黙しているライにどう声を掛けたらいいかわからず、ジェイはぶつくさとフォローを入れ始める。
グレンに言われた言葉がグルグルと頭の中を駆け巡っているまま、ライは静かに手の中のカバンに視線を落としていた。
するとここで初めて、不思議なことに気付く。
「……このカバン……」
「え?」
「このカバン…………オレのカバンだ」
「……ライの?」
グレンが持っていたのだから、てっきりグレンのカバンだと思っていた。
だがどうやら投げられたこのカバンは、ライの物だったらしい。
最初のコメントを投稿しよう!