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「知っ……いや、知ってるわけじゃねぇよ」
危うく『知るかボケ!』と言いそうになったが、寸前の所で言い止まる。
子供相手に話すということは、これほどまでに疲れることなのかと、なんだか保育士になりたいと言っていた中学の友人に尊敬の念さえ沸いてきた。
「じゃあ……どこに行けばいいの?お母さん、どこにいるの?」
「…………交番だな」
「こーばん?」
「とりあえず交番に行きゃあ何とかなるだろ。この坂を下って、三叉路を真っ直ぐ行った所にある自然公園の……」
「…………。」
「…………ちっ!一緒に行けばいいんだろが」
子供の顔がみるみるうちに曇っていくのを察知し、グレンは面倒臭そうにそう呟く。
今日はすぐに寝ると決めていたのに……どうして自分はこんなことをしているのだろうか。
重たい学生カバンをしょい直し、グレンは見知らぬ小さな子供と共に、学校方面の坂を下って行った。
「部室って……ここ?」
「体育館の地下にあるって珍しいよなー。活動してんのかぁ?」
第2体育館の地下。
そこには訝しげに周囲をキョロキョロと見渡す金髪と、ドアの前で中の様子を窺おうとしている青髪の男子生徒の姿があった。
緑の髪のシドが食堂に忘れ物を取りに行っている間、ライとジェイはこうして部活見学に来たのだが……
何故だかここの部活は妙に雰囲気が違う。
まず1年生が来たというのに、部室から全く人が出て来る気配がしないのだ。
先程からジェイがノックをしたり、中に向かって声を掛けたりしているのだが、完全にシカトされている。
オマケにドアには鍵がかかっていて、大事な会議中かと思いきや、中からは雑談しか聞こえてこないのだ。
「ここ……何て部活?」
「第2軽音部。去年の文化祭で発表見たんだけどさ、すっげーカッコよくて……そんで入学前からこの部活に入りたいと思ってたんだけど……」
ただの付き添いで来たライはジェイの説明を聞いて納得した。
やけに部室を探し回っていると思ったら、どうやらここが第2軽音部らしい。
新入生用に配られた部活紹介の冊子には、いくつか掲載されていない部活があると聞いたが……ここ、第2軽音部は、そのいくつかのうちの1つなのだ。
そういった部活は先輩に聞くか、部員に直接聞くかしないと見つからないような場所に部室があるというが、成る程、確かにわかりづらい場所に存在している。
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