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……シドの友人であるライ、その人であった。
『ウゼェ』呼わばりされたにも関わらず、怒る気配は全くない。
それどころかアイスをぶつけてきた子供にお金をあげる始末。
「……(コイツ……もしかして頭悪いのか?)」
嬉しそうに新しいアイスを手にして走り回る少年を、グレンはチラリと見遣ってから視線を戻した。
するとライは一瞬ビクリと肩を震わせ、どこか様子を窺うような雰囲気でグレンの顔を覗き込む。
……どうもこのライという男子生徒は、他人の顔色を窺う癖があるらしい。
それがグレンにとっては、苛々の要因となっているのだが。
「……あの……グレン君……その……」
「…………。」
「……えと……」
「ちっ!うじうじ、うじうじしやがって!!男のくせにキモい態度とってんじゃねぇ!」
「あ……ごめん……」
「いちいち謝るのもうぜぇ!」
「…………ごめん」
どこか淋しげに俯いたライを見て、何故だか突然罪悪感が湧く。
今までこんなことは無かったのに……何がグレンにそんな思いをさせるのか。
「…………おい」
「あ、あの……そうだ!オレ、グレン君に御礼が言いたくて……」
「は?礼?」
何か言葉を掛けなければと思い、ライに呼び掛けたグレンだったが、ライの奇妙な発言に思わず顔をしかめた。
そんなグレンの表情を不快感を表すものだと勘違いしたライは、一瞬躊躇(ちゅうちょ)したのだが……
「あの……グレン君がカバン、届けようとしてくれたって、先生、言ってたから。それにプリントも。だからその……ありがとう」
なんとか自分を奮いたたせ、やっとの思いで用件を口にすると、ライは御礼と共に丁寧に頭を下げる。
そんなライを、呆気にとられて見遣るグレン。
……わざわざそんなことを言うためにこの公園に来たのだろうか。
嫌われている、という自覚はあるはずだ。
自分を嫌っている人間に御礼を言いに来るなんて、頭がどうかしているのではないかとすら思ってしまう。
……少なくとも、グレンがライの立場だったら、絶対にしない。
「……用件はそれだけか?」
「え?……あ、う、うん」
グレンのぶっきらぼうな言い方に伏し目がちに頷くと、ライは暫く俯いた後、不意に何か言いたそうに顔を上げた。
だが、グレンと視線が合うなり再び俯き、何かを諦めたようにポツリと口にする。
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