花は折りたし梢は高し

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やることが無くなったライは、そうグレンへと話し掛ける。 「…………勝手にすりゃいいだろが」 「……え?……あ……」 ……勇気を振り絞って話し掛けたのはいいものの、これは肯定なのだろうか。 とりあえずそう判断したライは、かなりぎこちない動きでグレンの隣に腰掛けた。 ……隣といっても、グレンとライの間には大人一人分が座れるくらいのスペースが空いてしまっているのだが。 「…………。」 「…………。」 「(……な、なんて話し掛けたら……いいんだろう……)」 「…………。」 「(……グレン君、怒ってるかな?)」 依頼を遂行するための事務的なコミュニケーションには慣れている。 互いが対等な関係でのある程度の会話だって慣れてきた。 だが、自分が嫌われている状況でする会話は、何を話したらいいのかがわからない。 ……そもそも、こういう状況で話し掛けて反応してもらった試しがないのだ。 グルグルと色んな思いが渦巻く中、必死に話題を考え続けていると、突然横にいたグレンが口を開いた。 「……おい金髪、オレ様はてめぇみたいな奴が大嫌いだけどよ、てめぇは嫌いなタイプとかいんのか?」 「……え?」 「こういう奴はウゼェだとか色々あんだろーが」 「…………。」 「ま、べつにてめぇがオレ様の名前を挙げたって気にしねぇよ。殴ったりしねぇから正直に――」 「そういう話、好きじゃない」 「……あ゙?」 口を挟んできたライに、思わずグレンは顔をしかめる。 ……一体突然何を言い出すのか。 睨みつけるようにして見遣れば、やがてライは一つ一つ、言葉を噛み締めるように話し始める。 「……なんかさ……そういうの、やっぱりおかしいよ」 「……おかしい?」 「誰だって……嫌な部分とか、あると思う。人間なんだし」 「…………。」 「でも悪口言われたらさ、誰だって良い気分にはならないのに……なのに……なんでみんな、人の悪口言うんだろ。自分だって、言われたら嫌な気持ちになるのに」
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