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朝食が済み、後片付けを終えた女がスクリの部屋のドアを叩いた――が、やはり返事は無い。
小さく溜め息を溢し、合鍵でドアを開けて中へと入ると、スクリは布団の中でスヤスヤと寝息を立てていた。
「もう……馬鹿ぁ……」
小さく呟いた寝言に苛つきを覚え、女が手を広げる。
すると、手の平に水が現れ、女はニヤリと妖しげな笑みを浮かべた。
「馬鹿はアンタよっ!! さっさと起きなさいっ!!」
手をスクリへと向けると、水が礫[つぶて]と化して、ベットで幸せそうに眠るスクリを襲った。
「イタタタッ!? ちょ……痛い痛い痛いっ!!」
悲鳴を上げながら毛布で必死に応戦するスクリの右腕からは血が流れ、それに気付いた女は手をギュッと握り締めた。
途端、生き物の様にスクリを襲っていた水の礫が姿を消した。
「痛いじゃないかっ!! イジメは駄目なんだよ!!」
「うっさい!! スクリがご飯食べに来ないのがいけないのよ!!」
「おやおや、今日も夫イジメかい? アイナちゃんよぉ」
自らの意見を真っ向からぶつけ合う2人を、部屋の前でニヤニヤと笑いながら黒髪の男子が茶化す。
ただ、その笑みは直ぐに消える羽目になった。
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