始まりの鐘

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  「クレイド、何か言ったかしら……?」   ゆっくりと振り返りながら、アイラと呼ばれた金髪の女が手を上にかざす。 クレイドは逃げようとしたが、見えない壁に閉じ込められて身動きが取れなくなった。   「おいアイナ!! こんなとこで中級魔法使うんじゃねぇよ!!」   「うるさいわねぇ。アンタはまる焦げになるのがお望み?」   「んなわけねぇだ――ウワワワワッ!! アイナ!! 止めてくれっ!!」   クレイドの足元の床が赤く染まり出し、其処から小さな炎がチロッと顔を出したり隠したりし始め、クレイドは慌てて手から水を出して足元へと放った。 だが魔力の差は歴然で、幾ら水をかけても炎が消える気配は無い。   「悪しき魂に紅蓮の光を、灼熱に潜みし気高き獣よ――」   「待てーっ!! 詠唱[えいしょう]唱えないでーっ!! 悪かった、俺が悪かった!!」   ようやく自らの非を認めたクレイドに冷ややかな視線を送り、アイナは詠唱を止めた。
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