そばにいたい

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私は言われた通り階段を降りて、歩いている最中、携帯を取り出し、夏の番号を表示させた。 …電話くらいなら… 邪魔にはならないよね。 迷いに迷ったけれど、やっぱりどうしても声が聞きたかった。 そっとコールボタンを押す。 トゥルルル… トゥルルル… 『…春花?』 「…?」 『もしもし?春花?』 「……」 どうしよう。 胸が高鳴る。 だって… あきらかにすぐそこから夏の声が聞こえてる。 受話器からの声と… ジャージを着て座っている後ろ姿から聞こえる声。 『もしもし?』 「…夏…」 『……』 夏がゆっくりと振り返る。 夏の目に、携帯を耳に当てて立ち尽くしている私の姿が映った。 「春花…何でここに…」 「それは…こっちのセリフだよ! 合宿行ってるんじゃなかったの?!」 「え…来てるよ? ここに」 「…え? でも…スパルタ指導って… 素晴らしいコーチに教えてもらってるって…」 すると突然、夏が吹き出すように笑った。 「それ、裕二から聞いたんだろ。 俺はあいつにコーチしてもらってるんだよ」 「裕二…さんに? ここで?」 夏が微笑みながら頷く。
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