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「瞳子ちゃーん」
湊川高校の門の前で大きく手を振る少女が一人。加納由美(かのうゆみ)ちゃんだ。
身長は私よりも少し高い160センチ。風になびくロングヘアーも、由美ちゃんだととても爽やかに映る。それになにより、キャシャな体型で、小さな顔の中で大きな目がくるくると動くところがさらにかわいい。
「由美ちゃーん。おまたせ。」
私もそれに応えるように大きく手を振る。
「夏休みの宿題どこまで終わった?」
「1頁目でやめたわ。だって、問題集が止めていいよって言うんだもん。」
「瞳子ちゃん、諦めるの早すぎよ。」
「あははー。やっぱり?」
校門をくぐると、自転車をおりて、押しながら進まなくてはならないのがめんどくさい。
プールでは水泳部が練習している。なんて羨ましいやつらなんだ。
「ねぇ由美ちゃん。水泳部って、夏の間だけ羨ましくなるのはなぜかしらね。夏以外は筋トレしかしないのよ?絶対入ろうと思えないわ。みんな一体、何が楽しいのかな?」
「……。」
「ねぇ?」
「……。」
「由美ちゃん?」
由美ちゃんの視線の先には、見たこともない男の人がいた。
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