消えぬ匂い 二

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 その対立する存在が今、互いの前にいるのだ。  黒を基調とした揃いの衣装こそが、『源』の兵であるとわからせる。  相手が気付いているのかはわからない。しかし、二人は相手が敵だとわかっている。  今は大事の前。事を大きくするわけにはいかない時期であり、本来ならば相手に残る印象自体薄ければ薄いほどよい。うまくこの危機を脱しねばならないのだ。  それに、今一戦交えたとしても、相手は十人程もいる。紫丞だけならば逃げの一手でどうにでも出来たかもしれない。しかし、綾がいる。分が悪すぎるのだ。 「わかった、わかった。女、そんなに男に手を上げるな。見苦しいぞ」  声を掛けてきた男の後ろにいた男がそう言ってきた。  男の言葉が気に入らなかったのだろう。綾は一瞬、男を睨み付ける仕草を見せた。 「すみません。お騒がせして。こいつにもちゃんと言っておきますから」  すかさず紫丞が綾の頭を押さえ、強引に頭を下げさせた。 「それじゃ、失礼いたします」  そう言うと、何度も頭を下げ、紫丞と綾は歩を前に進めようとした。 「行け。先程、人斬りがあったようだから、貴様のように女に頭が上がらんやつは夜中に外を出歩くな」  
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