消えぬ匂い

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 二人の男に比べれば幾分若く見えはするが、表情に現れた幼さとは違い、その言葉には冷たさも含まれるている。  こう見えて北条綾(ほうじょうあや)は二人より一つ年上である。 「な……何言ってるんだよ? 雨の中手合わせしただけだって。ほら……あれだ……いかなる状況でも対応出来なければ、龍士とは言えない! って赤城さんも言ってただろ?」 「嘘ばっかり! 紫丞(しじょう)あんたは黙ってて!」  紫丞と呼んだ短髪の男の言葉に、綾は激しい口調と共に怒りに満ちた瞳を向けた。  怒号の言葉を浴びせられた相楽紫丞(さがらしじょう)は、手拭いを頭に乗せたまま呆然と立ち尽くしている。  雨に濡れ重くなった着物が肩からずれたその姿は、間抜けそのものである。 「玄達(げんたつ)……斬ったんでしょ? 人を……? いくら手を洗っても消えないよ。――血の匂いは……」  紫丞に向けた怒りの顔とは違い、綾は切ない表情に変わっていた。 「……斬ったさ。それがどうした?」  振り向くこともせず、止まっていた手を再び動かす長髪の男、三上玄達(みかみげんたつ)は答えた。
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