変わらぬ月

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 白く輝く月の光が、闇に染まった地上を照らしている。いくら夜とはいえ、満月ならば灯りなしでも歩くことも出来る。  そんな人々を照らす月を見上げたままたたずむ男がいた。厚手の上着を羽織り、腰の左右には刀を帯びている。左の刀は打刀であろう。鞘の反りからして、刀の刃が上向きである。  ところが、右の刀は逆に鞘の反りは下向き。太刀である。普通ならば左の腰に脇差しと打刀、共に帯びるはずだが。  しかし、その両方の刀もほぼ同じ長さであろう。不思議な事をする男である。  夜空を見上げた顔にはいくつかのしわが刻まれ、瞳は鋭く月を見つめていた。年は四十程であろうか。  男の名は草薙葵(くさなぎあおい)。肩に掛かろうかという黒髪を風になびかせたたずむその姿は、力強くもあり優美さも感じさせる。 「今宵は満月か……」  葵はしばらく動くことのなかった瞳を地上に下ろし、再び空へと戻す。  その瞳には先ほどまでの鋭さはなくなっていた。 「何をしている? 草薙」  背後からの声に驚き葵が振り返ると、一人の男が歩きながら近づいてきている。  年は葵と同じ程であろうか。後ろ髪は長く、腰にまで届きそうな勢いである。葵と同じ黒の上着を羽織り、葵と違い背中に刀を背負っている。  その刀は葵のそれと比べても長い。その為背中に背負っているのだろうか。 「長門か。なんだ? わざわざ気配を絶って近付く事もあるまい。驚かせるな」
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