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紫丞も綾も玄達と同じく先の大戦、封龍戦争で父親を亡くしている。
共に赤纏隊の隊長各であったのだ。その為、三人は幼少の頃から親しくまるで兄弟のように接してきていた。
「あいつは昔から優しすぎたからな。だから、おやじさんの死で誰よりも傷つき心を閉ざして変わってしまったと、俺達に思わせようとしてるのかもな」
少しばかり弱くなってきた雨が傘に当たり弾ける音にかき消されない程度の声で紫丞がそう言った。
「変わってしまったように私達に思わせてる? どうしてそんなことする必要があるの?」
雨に濡れた地面から、自分よりも背の高い紫丞に視線を移した綾は、あきらかに不可思議な事を言う紫丞に疑問を投げ掛けている。
変わってしまったと言うならわかる。しかし、紫丞は今、玄達は変わってしまったと思わせてるのかもしれないと言ったのだ。
綾はその意味がわからなかったのだろう。
「理由までは俺もわからないさ。でも、あいつはそうする事によって何かを隠そうとしている。確証があるわけじゃないが、それは間違いない」
その言葉を聞いて綾はみょうに納得した。紫丞はどこか間抜けなところがあるが、不思議と周りの者の事をよく見ている。
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