消えぬ匂い 二

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 細かな変化まで。言葉のわずかな変化にまで気付くのだ。  一目見ただけでは大柄で、大雑把に思える。とても、そのような敏感さがあるとは思えない。  が、誰よりも早く感じとり、どの様に対応すればいいかわかる優しさもある。それが、紫丞の魅力の一つなのかもしれない。  しかし、それが綾のことになると別である。正確には、玄達のことを想う綾のことになると、という表現が正しかろう。  先程の様に、玄達へと向けられた言葉を聞いたとき、紫丞は何も言えなくなってしまうのだ。 「それにな、あいつ……綾が怒って出ていった時、凄く後悔していたぞ。何だかんだ言ってあいつは変わっちゃいない。子供の頃の優しいままなんだよ」 「玄達ちゃんと心配してくれてたんだ……」  紫丞の言葉を聞いて綾の口元が緩む。明かりが無いためはっきりとは見えないが、その瞳からは涙とも髪をつたって流れた雨ともわからぬものが見えた。  そんな表情を見た紫丞は微かに顔をしかめている。それは、嫉妬と呼べる表情なのかもしれない。  その後二人は言葉を発することなく歩みを続けた。聞こえるのは、降り続く雨音のみである。 「貴様達、こんな夜更けの雨の中、何をしている?」  不意にどこからか声がした。二人はその声がどこから発せられたものかわからず、辺りに視線を走らせている。  声の主は後ろにいた。いや、正確に言えば声の主は一人ではなく、揃いの黒の衣装を身に纏った者達と共にいた。十人程であろうか。うち、三人が提灯を持ち辺りを照らしている。
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