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長門と呼ばれた男の名は長門明(ながとあきら)。
「俺が近づいていることに気付かないのは貴様が気を抜いているからだ! そんなことで王宮守長が勤まるのか?」
厳しい表情で明が口にした王宮守長とは、『源』と呼ばれるこの国の王都、赤眉(せきび)の中央に位置する王宮の守護を責務とする王宮守護隊の長のことである。
「それとも……その程度だからこそ王宮守長程度に落ち着いているのか?」
明は皮肉ともとれる言葉を、その険しい表情と共に葵に投げ掛ける。
「そういう自分はどうなんだ? 同じ王宮守護隊だろ? しかも、お前は副守長だ。たいして変わらんだろ?」
葵は苦笑しながらそう答えた。
「変わらんな……。大戦を生き抜き、最強の龍士と呼ばれた貴様ですら、王宮守長だからな。満足しているのか?」
歩みを止め、諦めにも似た表情を浮かべ明は葵に問う。
(またそれか)
うんざりだ。そんな表情を葵は浮かべている。
明はここへ来る前に酒を飲んでいたのだろう。酔う度にいつもこの話だ。
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